【千葉魂】 鈴木を変えた大ベテランの言葉 福浦「できることはすべてしろ」

 遠征先の宿舎での出来事。その日、試合に敗れて6連敗。キャプテンの鈴木大地内野手(24)は試合後、一人、ビデオルームに向かった。スコアラーなどが収集した映像が流れ、いつでも選手たちがチェックできるようにしてある部屋だ。

 試合に敗れ、憔悴しきった表情で部屋に入ると、ベテランの福浦和也内野手(38)もいた。最初は特に会話もなく時が流れた。二人はそれぞれ試合の映像を見ていた。ふとした瞬間だった。プロ21年目の大ベテランは鈴木に問いかけた。

 「なあ、大地。きょうの試合で一つ気になることがあった。ピッチャーがピンチの時、誰もマウンドに行って声をかけなかったよな」

 この試合、西武ドームにてライオンズに5-10で敗れていた。先発の唐川が打たれた。3点リードの二回、5本の長短打を浴び逆転を許した。その場面をベンチで見守っていた福浦は、そこで内野陣が唐川に声をかけることがなかった点に疑問を呈した。映像を見入っていた鈴木だったが、その一言が胸に突き刺さった。何度も自問自答した。

   □     ■     □

 「もしかしたら自分が間を置いて、ポンと肩を叩くだけで、リズムが変わったかもしれない。声をかけるだけで少し気持ちが楽になったかもしれない。小さいことかもしれないけど、キャプテンとしてやれることをしていなかった。それが恥ずかしかった。こんなに勝ちたい、勝ちたいと気持ちでは思っているくせに、やれることをせずにそう願っていただけの自分が情けなかった」

 若武者が、自分の投げかけた言葉に、なにかを感じたと察した福浦は続けた。今度は映像を見るのを止め、鈴木に鋭い視線を向け、強く願うように話し出した。

 「オレは試合に出たり出なかったり。オマエは今、全試合に出ている。だからオマエが先陣を切ってやってほしい。グラウンドでは年齢も関係ないし、遠慮をする必要もない。そうすることでなにかが変わる可能性はある。ならば、した方がいい。できることはすべてした方がいい。だいぶ昔のことだけどオレも先輩にそう教わった」

 それからの鈴木は動いた。翌日には練習前にグラウンドで選手だけのミーティングを開いた。井口、福浦、サブローらベテランに代表して発言をしてもらった。若きキャプテンである自分が鼓舞するだけではなく、ベテランの含蓄のある発言によって、選手たちの心を動かそうと考えた。勝ちに対する思いをもう一度、共有し直した。そして、守っている時はことあるごとに投手に声をかけるようになった。

   □     ■     □

 連打を食らい、気持ちの整理がつかない状態になっていると思った時は一呼吸を置くためにマウンドに歩み寄った。時には声をかけ、時にはポンとお尻を叩くだけの時もある。叱咤したり、激励したり。ただ見守るのではなく動くことで事態を好転させようと努力し続けている。

 「キャプテンという立場もあって、誰よりも勝ちたいという気持ちをグラウンドで出すようにしている。負けるのは悔しいし、勝つと嬉しい。絶対に諦めない。どこまでも一つの勝利にこだわって貪欲に全員野球をする」

 鈴木は言霊(ことだま)を信じている。言葉に宿る不思議な力のことで、古くから口にした言葉通りの事象が、もたらされることを言霊という。だからピンチの時、いつも守りながらピッチャーに叫ぶようにつぶやく。「大丈夫。絶対に抑えられるから。オレが守ってやるから」。今シーズンも残り42試合となった。キャプテン鈴木が全身全霊をささげて挑む戦いの日々はまだ続く。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



  • LINEで送る