2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

切迫感ない初動遅れ 危機管理体制強化が急務 台風15号の県対応 【2019年千葉この一年】(3)

県災害対策本部の初会合に出席する県幹部ら。この時点で、台風15号上陸から既に丸一日が経過していた=9月10日、県庁
県災害対策本部の初会合に出席する県幹部ら。この時点で、台風15号上陸から既に丸一日が経過していた=9月10日、県庁
台風15号の影響で、連なるようにして倒壊した電柱=9月9日、館山市
台風15号の影響で、連なるようにして倒壊した電柱=9月9日、館山市

 9月9日午前5時前、千葉県に上陸した台風15号。最大瞬間風速は57・5メートル毎秒(千葉市)と、県内観測史上最大の暴風を記録した。住宅被害は6万8048戸。屋根修繕中の転落による死傷者が相次いだ。農林水産業にも427億5500万円と、まれに見る甚大な被害をもたらした。最大時約64万1千戸に上った大規模停電の長期化が事態の深刻化に拍車を掛け、熱中症などによる死者が出たほか、商業分野でも食料品在庫の廃棄や観光施設の休業を余儀なくされた。

 9日は鉄道の計画運休のみならず、信号の停電や倒木で道路網もまひ。未曽有の大混乱の中、県が災害対策本部を設置し、森田健作知事ら幹部が初会合を開いて対応を話し合ったのは、台風上陸から丸一日たってから。対応に当たる職員の参集も遅れた。

 情報収集の動きも鈍かった。県は当初、オンライン上で市町村が被害の状況を入力する「防災情報システム」を頼っていたが、市町村側に入力の余裕はない。県が市町村へ情報連絡員の派遣を始めたのは発災4日目のことだ。県の初動遅れを、検証に当たる外部有識者らは「切迫感がなかった」と断じた。

 そもそも県庁に危機対応の能力はあったのか。防災危機管理部は現状108人体制で、2千人近い部署もあることを考えると手薄さが目立つ。県庁内の司令塔どころか、同システムによる情報収集すらおぼつかず、少ない人数で休みなく働き、いたずらに疲弊していくありさまだった。

 同部のある職員は、時間外労働が9月に255時間、10月に315時間に上ったという。県は「他県と比べ、防災部署の人数が少ないということはない」と説明するが、実情に照らせば人手不足は明らかではないか。

 それでも、災害への準備が全くなかったわけではない。県地域防災計画やマニュアルの類いはそろっていたし、ブルーシートなども備蓄していた。被災市町村への職員派遣やシート搬送など既定の対応すら満足にできなかったのは、「台風の雲域が小さかった」「これほどの停電長期化を想定していなかった」など、森田知事や同部幹部ら、リーダーたちが事態を甘く見ていたからにほかならない。

 県は対応の検証を進め、計画やマニュアルも見直すとしているが、いくら立派な冊子を作っても機能しないなら無用の長物。「もう災害が少ない県ではない」「人命第一」(森田知事)と言うなら、命を預かる防災部門の増強、最悪の事態を想定して動く意識付けなど、災害へのアンテナの感度を高めてほしい。54もの市町村を抱える千葉県だからこそ、情報収集や支援を手抜かりなく遂行する体制づくりが急務だ。次なる災害は、きょうにも襲来するかもしれない。


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