凶行の陰にいびつな結束 柏の妻殺害遺棄 親子控訴、審理行方は 【法廷から 記者が見た人生模様】

鷹仁被告は母親の恵美被告と協力して実家の庭に遺体を埋めていた。事件は4カ月以上たって発覚した=昨年7月、茨城県取手市
鷹仁被告は母親の恵美被告と協力して実家の庭に遺体を埋めていた。事件は4カ月以上たって発覚した=昨年7月、茨城県取手市

 夫は妻を「殺すしかない」と思い込み、義理の娘に悪感情を抱いた母親は息子から持ち掛けられた殺人を後押しした。柏市の弥谷麻衣子さん=当時(30)=が昨年3月、夫である鷹仁被告に首を絞められ殺害された事件。千葉地裁で行われた裁判員裁判では、常軌を逸した凶行に走らせた親子の強い結束が明らかになった。

 4カ月以上もの間、遺体は実家の庭に埋められて隠されたままだった。裁判員らは強固な殺意をうかがわせる側面が見えたことで非難。両被告は犯行に及ぶまでに、水難事故や行方不明を装った殺害計画を話し合っていた。

 夫の鷹仁被告(37)に懲役15年、母親の恵美被告(64)には求刑を1年上回る懲役7年が言い渡された。

◆「妻から暴力」強調

 「子どもが殺されると思い、守るためだった」。鷹仁被告の口調ははっきりとしていた。妻から日常的に受けていた暴力や暴言がこう考えるきっかけになったと強調した。殺害以外の方法を検討したが、子どもを守れないと思ったという。

 麻衣子さんが子どものためを思って作った自宅を清潔に保つルールに耐えられず、暴力も相まって精神的に病み、仕方がなかったと弁明。訴える姿は真剣そのものだったが、麻衣子さんをおもんぱかる言葉は少なかった。

 「鷹仁被告の証言は、麻衣子は殺されても仕方ないと言っているように聞こえる。“死人に口なし”とはこのことで麻衣子は反論できない」。被害者参加制度を利用し証言台に立った妹が、亡き姉に代わって意見を述べると、傍聴席からはすすり泣く声が聞こえた。

◆主張にほころび

 恵美被告の主張はほころびを感じる部分が目立った。一貫して息子の殺害意思を信じていなかったと訴える一方で「殺害を反対した」と、本気と感じていなければ出ないような発言も。最後までこの矛盾は解消されなかった。判決後、会見した裁判員も「事件と向き合っているのか」と首をかしげた。

 一連の犯行について「(息子の)家族3人の幸せを守ろうとしたが裏目、裏目に出てしまった」と恵美被告。ただ、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で麻衣子さんをやゆする複数のメッセージが証拠として提示され、発言との矛盾がまたも露呈。判決は恵美被告が麻衣子さんに悪感情を抱いていたと認定した。

◆「一人で思い切れず」

 「やっぱり一人じゃ思い切れなかったよ」。「そう言ってもらえるとオカンも救われる」。残っていたメッセージのやり取りは、鷹仁被告の殺害計画への恵美被告の高い貢献度を裏付けた。親子のいびつな結び付きが、ほかの手段を選ばせなかった。

 両被告は判決から10日以上たってから控訴。審理の場は東京高裁に移る。殺す以外の選択肢を考えることが本当にできなかったのか。「殺害ありきではなかったか」(岡部豪裁判長)という問いに正面から向き合ってほしい。

(報道部・渡邊翔太)


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