「生活犠牲か」住民反発 成田空港の発着時間延長

 成田空港で、航空機の発着時間を深夜と早朝の計3時間延長し、午前5時~翌午前1時とする検討が進んでいる。内陸部にある成田では1978年の開港以来、騒音への配慮から、発着時間は原則として午前6時~午後11時に限られてきた経緯があり、住民は「生活を犠牲にしろというのか」と反発。専門家からも「深夜早朝の騒音は健康被害につながりかねない」との懸念が出ている。

◆経済効果

 成田国際空港会社(NAA)は、アジアの主要空港との競争激化や訪日外国人増を理由に、航空機の年間発着枠を現行の30万回から50万回に拡大することを計画。昨年9月、地元自治体に発着時間拡大と滑走路の延伸・新設を柱とした空港の機能強化案を示した。

 地元経済の活性化にもつながると強調し、地元自治体に交付金の増額を提示した。雇用増などの効果を見込む地元経済界も「早期に実現する必要がある」と賛成し、地元市町の首長の多くも理解を示す。

 周辺住民には、騒音はこれまでも悩みの種だった。横芝光町の女性は「子どもを庭で遊ばせていると、航空機のエンジン音がうるさくて会話ができない」と話す。ただ、空港関係の仕事をする人が多く「反対したくても言いづらい」(多古町の男性)と、表だって声を上げることを避ける人も少なくない。

◆危機感

 だが、強化案が実現すれば深夜早朝の騒音に加え、新たに騒音にさらされる住宅が少なくとも2千戸増えることになり、住民の危機感は強い。「眠る時間が4時間しかない」「今までずっと我慢してきたが、もう限界だ」。昨年10月からNAAが地元市町で続けている住民説明会では、怒りの声が渦巻いている。

 一定の騒音被害を受ける住民は移転や住宅防音の費用助成を受けられるが、指定区域を少しでも外れれば対象外になることへの不満もある。芝山町の男性は「隣の家は移転対象になりそうだが自分の家は違う。不公平だ」と訴えた。

◆懐疑

 専門家には騒音の健康リスクを指摘する意見も。北海道大学大学院の松井利仁教授(環境衛生学)は「深夜早朝の航空機騒音の影響で睡眠障害になれば、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす恐れが高まる」と強調する。

 NAAは、住宅の寝室に内窓を設置し「安眠を確保する」と説明しているが、周辺には古い木造住宅も多く、松井教授は「窓だけでは目立った効果はない」と否定的だ。

 NAAの夏目誠社長は「理解してもらえるまで何回でも説明する」と強調したが、ある住民は「理解しろと言われても無理。強引に計画を決定してしまうのではないか」と懐疑の目を向けた。


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