来館者と作り上げる芸術 空間、作品…変貌するラボ 千葉市美術館 【ふさの国探宝】

リニューアルで新設された5階の常設展示室=千葉市美術館
リニューアルで新設された5階の常設展示室=千葉市美術館
千葉市美術館1階のさや堂ホール。宮島達男さんの個展の一環でプロジェクトマッピングが行われている
千葉市美術館1階のさや堂ホール。宮島達男さんの個展の一環でプロジェクトマッピングが行われている
1階に新設されたミュージアムショップ「BATICA(ばちか)」
1階に新設されたミュージアムショップ「BATICA(ばちか)」

 浮世絵などのコレクションで知られる千葉市美術館(同市中央区)。リニューアル工事で待望の常設展示室が新設された。美術関連書籍をそろえた図書室や、作家と来館者が一緒になって芸術空間を作り上げる「子どもアトリエ(つくりかけラボ)」も誕生。一流の芸術を鑑賞するだけではなく、来場者が独自の芸術を創造する場として注目が集まっている。

 同美術館は1927年建設の旧川崎銀行千葉支店(現・さや堂ホール)を包み込むように建てられたビルに、中央区役所と同居して1995年に開館した。同区役所が昨年5月、近くの複合施設に移転したことから、ビル1棟まるごとを美術館施設とするための拡張工事を実施。開館25周年の節目でもある今年7月、新装オープンした。

 拡張部分の5階に設置されたのが常設展示室。同美術館は「近世・近代の絵画・版画」「房総ゆかりの作家・作品」「現代美術」を3本柱に作品を収集しており、収蔵計約1万点の中から学芸員が季節やテーマに沿って展示作品を選んでいる。「近世・近代の絵画・版画」は作品保存のため、約1カ月ごとに展示替え。10月は俵屋宗達ら琳派の絵師、11月は円山応挙の作品を公開する予定だ。

 同美術館の広報担当、磯野愛さんは「これまで国内外の来場者から浮世絵などの収蔵作品と見たいとの希望があった。スペースの関係上、公開作品数は限られているが、常設展示室はおおむね好評」と話した。

 「現代美術」は、企画展示室(7、8階)で開催している現代美術作家、宮島達男さんの個展にちなみ、宮島さんと恩師の榎倉康二氏のコラボ展を12月まで開催。個展で展示している宮島さんのインスタレーション作品「地の天」は、1995年に榎倉氏の訃報を受け追悼の意味も込めて制作された。当時実用化間もない青色LEDが1から9までをカウント。0は表示されず永遠に繰り返す「生」と「死」を想起させる。

 4階に新設された「つくりかけラボ」は来館者参加体験型の施設。交代で招く作家がワークショップや公開制作を通して、来場者とラボの空間をインスタレーション作品に仕上げていく。「ラボは常に『つくりかけ』の現在進行形で、毎週のように様子が変わる」と磯野さん。12月までは建築家の遠藤幹子さんが千葉に伝わる民話「羽衣伝説」を基に、新聞紙で独自の物語世界を作り出している。

 4階には図書室「びじゅつライブラリー」も開設。専門書だけではなく、子どもたちが芸術への関心を深められるよう絵本、児童書など計約4500冊をそろえた。このほか、4階に市民アトリエ、5階にワークショップルーム「みんなでつくるスタジオ」を設置。同美術館は本年度、ワークショップパートナーの登録制度をスタートさせており、地域で活動していた専門家とタッグを組み、同スタジオを拠点に市民に芸術体験のプログラムを提供する。

 磯野さんは「芸術を一方的に伝える施設ではなく、インプットする場所とアウトプットする場所が同じ建物内に連続している施設」と新美術館を説明。「アートは人生に不可欠。作品と対話することで、新しい世界が見えてくる。新型コロナでふさぎがちだった気持ちが楽になるきっかけを与えてくれるはず。気軽に美術館に足を運んでほしい」と呼び掛けた。

◆一口メモ

 拡張リニューアルに合わせて、館内に三つの飲食店がオープンした。いずれも千葉市若葉区などで和食レストラン「優雅亭 盛山」を営む「山盛」が運営している。

 11階は同レストランの美術館店が入る。新型コロナウイルスの感染防止のため、現在は弁当形式のお膳(1日20食限定)のみの提供だが、徐々にメニューを増やしていく予定という。

 1階のカフェは船橋市内の福祉作業所と連携。同所で製造したパンやクッキーを販売するほか、就労支援としてスタッフの派遣も受ける。地下1階の居酒屋はオープン記念として千葉の地酒を特集している。


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