
花見川団地では民間とタッグを組み商店街をリノベーションした
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は、前身である日本住宅公団が戦後の住宅不足を解消するために誕生し、国内の発展に大きく貢献してきた。高度経済成長時代には急増する住宅需要に応え、全国で良質な団地を整備。建築から半世紀ほどを経て、持続可能な団地にしようと、各地でさまざまな事業を展開している。
花見川団地(千葉市花見川区)では民間企業とタッグを組み、2024年3月に商店街が現代的にリノベーションを完了。25年4月には地域活性化のための交流拠点も整備され、イメージを一新した「団地」と「人」の「今」を紹介する。
県内最大規模の団地
花見川団地の竣工は1968年。京成本線八千代台駅からバスで10分ほどの立地で、賃貸と分譲を合わせて約7200世帯、約1万1千人が暮らし、県内最大規模を誇る。団地内には多数の店舗がある商店街や市民センター、図書館分館、二つの保育所、三つの幼稚園を有し、小中学校が隣接する。近くには大きな公園や森があり、団地周辺だけで快適な生活ができる環境が整っている。

リノベーションされた商店街は利用者でにぎわう
無印良品とタッグ
UR都市機構が全国で保有する団地は、それぞれ年月を重ねて過渡期・転換期に直面。団地の良さを見直し、優れた部分を上手に生かしながら、愛着を持って長く住み続けていけるよう、2012年から生活用品ブランド「無印良品」の住空間事業部門を担う「MUJI HOUSE」とタッグを組み、現代の暮らしにマッチした団地へリノベーションしてきた。
全国で展開してきた「MUJI HOUSE」とのリノベーション住宅が千戸を超えた21年、花見川団地では全国に先駆けて「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」がスタート。外観や屋外広場、商店街区まで刷新した。
7者協議会でにぎわい創出
屋外のリノベーションに加え、ソフト面でのにぎわい創出へ、「UR都市機構、千葉市、MUJI HOUSE、良品計画」の4者で地域生活圏の活性化を目的に協定を締結。
さらに、花見川団地自治会、花見川住宅自治会、花見川団地商店街振興組合を加えた7者で「花見川団地を拠点とした地域生活圏の活性化推進協議会(7者協議会)」が発足した。
リノベーションその後
商店街のリノベーションから2年、交流拠点の誕生から1年。花見川団地は、外部からの視察や各種メディアからの問い合わせも増え、多方面から注目を集めている。
特に商店街の通りは、かつては雨に濡れずに買い物できるよう作られた古いアーケードを撤去したことで明るくなり、青空や団地の象徴である給水塔もよく見えるようになるなど、イメージも一新。ストリートファニチャー(つながるベンチ)と呼ぶテーブルやベンチを設置し、休憩スペースも整備したことで、毎日のように高齢者や放課後の子どもたちが集まる光景も見られる。通りの利用者層が拡大し、多様な活気があふれている。
グッドデザイン賞受賞
「花見川団地を拠点とした地域生活圏の活性化」は、2025年度グッドデザイン賞(地域の拠点・コミュニティづくり)を受賞している。最も評価されたのは、ソフトとハードを並行したまちづくりと、そこに多くの人が関わっている部分。「昭和期に建設された大規模団地を拠点に、商店街や屋外空間をリノベーションし、世代を越えた交流の場を生み出している。団地活性化の取り組みを通じて、企業・行政・住民に加え商店会や自治会を含めた連携を実現し、ハードとソフトを一体的に進めた点は質の高さを感じた。地域生活圏の再生モデルとして今後の広がりにも期待が持てる。」という評価コメントも寄せられた。
団地の再生=ハード部分のイメージを持たれがちだが、今回は物理的には商店街のリノベーションのみ。基本的には住民、自治会と商店会、民間、行政の取り組みによって、既存の環境を生かし、活性化させていったことが受賞につながった。

団地活性化の取り組みでグッドデザイン賞受賞

タウンミーティングの様子
7者の取り組みの実績
リノベーション後、年4回程度実施されているのが「タウンミーティング」。花見川団地を拠点とした地域のこれからの暮らしについて、考えるイベントで、団地居住者はもちろん、近隣住民の誰でも参加でき、ざっくばらんに話し合う場となっている。そこでは、団地でやってみたいことなど、前向きな提案が出され、第2回で提案された健康マージャンは、実際に交流拠点の106号室で実現し、初心者向けの敷居の低いマージャンの会となって継続中。地元愛を感じる発言も多く聞かれ、実現できそうなものは実現していこうと、さまざまな取り組みが進められている。
愛着の生まれる団地で
地域の活動や取り組みの母体とも言える7者協議会は今後、地域のことを考える機関として関わる人の輪を広げていければという想いもある。
UR都市機構が手がけた団地の中でも全国で3番目の規模を誇り、かつてここに住んだ方や、ここでの思い出がある方の数も多い。そんな花見川団地の魅力は、ウエルカムな受け入れ体制の充実ではないだろうか。自治会も他の組織とオープンな関係を構築し、声を掛け合える体制があり、さまざまなイベント開催が実現する土壌になっている。
ハードやソフトはもちろん、愛着の生まれる団地に暮らし、携わる「人」の魅力が、何より大きいのかもしれない。
住まう人の声
3月14日、花見川団地商店街では第28回「100円商店街」が開かれた。各種キッチンカーや古本・古着市、商店街マルシェ、フリーマーケットの他、グリーンスローモビリティの試乗体験など、多くの地域住民でにぎわった。
実際に花見川団地や近隣に居住し、リノベーションを体験した住民の声を聞いた。
◆花見川団地自治会 副会長:上田昭夫さん(82)「ここに越してきた40年ほど前は、すごくにぎやかで、買い物も結構便利だった。今、環境は変わったが、新しい取り組みやイベントが増えて、メディアへの露出も増えた。夏のビアガーデンでは人が集まるし、気軽に利用できる飲食店が増えたらいいなと思う。緑が豊かで、駅までのバス便も多くあるから住みやすいですよ」
◆花見川住宅自治会 会長:齊藤實さん(78)「勤務先が近く、結婚を機に越してきて45年。あの頃、本当に人が多くて、にぎわっていた。田舎の母が遊びに来ると、普段の日なのに『今日はお祭りがあるの?』と聞かれたよ。今でもイベントがあれば人が集まる。団地の近隣の方たちとも交流を図れる。住民の方たちも少しずつ活性化に向け、意識が高まっていると思う。ぜひ、多くの方に来ていただきたいですね」
◆商店街のドーナツショップ経営:大塚弥生さん(42)「結婚後5年ほど、この団地に住みました。2年前から、ここでドーナツとアメリカ輸入雑貨を販売中ですが、年配のお客さまが多く、私とお話しに来る方がほとんど。それぞれのストーリーを聞かせてもらえて楽しい。団地は子どもも親も、どんどん仲間が増えるし、便利な施設がそろっていて子育て世代には本当におすすめ。いずれはお店でランチを提供できるようにしたい」
◆団地近隣で居酒屋を経営し、100円商店街では揚げたての手羽先をテイクアウト販売:渡部貴久さん(42)「団地のすぐ近くで生まれ育ち、ここは地元。昔、この商店街にあった中華料理屋さん(現在は閉店)の手羽先を再現した懐かしの味を、自分のお店で提供しています。今回、イベント初出店。当時の子どもたちみんなの思い出の味で、当時は1本50円でした。この手羽先が、少しでも地域活性化の一助になれば」

多くの地域住民でにぎわった「100円商店街」

壁一面の作り付けの棚が映えるダイニング
商店街の交流拠点
25年4月にオープンした交流拠点は、花見川団地商店街北街区にあり、地域生活圏活性化の起点となっている。106号室の花見川コミュニティルーム「コミュニティサークル」は、地域住民の「やってみたい」を実現する場。サークル活動やワークショップを開催できる多目的スペースで、団地内外や多世代の交流を促進し、顏なじみの増える活動を目指す。 108号室は無印良品の出張販売を定期的に運営する「コミュニティストア」。107号室の1階はコーヒーと古本をテーマとしたカフェ「コミュニティカフェ」。その区画内には、「一坪開業スペース」を併設し、1日お試し出店の場所として、地域住民のチャレンジを実現する場に。107号室の2階は、無印良品の商品を使用した「団地のくらし体感ルーム」。団地暮らしに関心のある方は過ごし方を、既に住民の方は気づきや工夫を体感できる。
団地内には他にも、商店会が運営する「はなみがわLDK+」や自治会が運営する「ふれあいの家『絆』」、民間事業者による「団地テーブル」といったコミュニティスペースがある。






