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新型コロナウイルス情報

東北福祉大学長・千葉公慈住職に聞く コロナ時代の仏教とは 葬儀や法要、簡素化進む コロナ、災害は“警告”

コロナ時代における仏教の在り方などについて語る千葉住職=市原市朝生原の宝林寺
コロナ時代における仏教の在り方などについて語る千葉住職=市原市朝生原の宝林寺
昨秋の台風で被害を受けた鎮守の森で当時の様子を説明する千葉住職=市原市朝生原の宝林寺
昨秋の台風で被害を受けた鎮守の森で当時の様子を説明する千葉住職=市原市朝生原の宝林寺

 新型コロナウイルスとの闘いは、いまだ一進一退が続く。命を脅かすばかりか、経済活動へも深刻な影響を及ぼし、新しい社会システムの構築が急がれている。仏教の世界においても葬儀や法要の簡素化が進むなど、日本人の仏教との向き合い方に変化が出始めた。テレビ出演や講演、著書などを通じ仏教の教えを分かりやすく説く東北福祉大学学長(仙台市)で、曹洞宗宝林寺(市原市朝生原)住職の千葉公慈さん(55)に「コロナの時代」に仏教が果たすべき役割や、今後の在り方について聞いた。(聞き手 市原支局・坂巻洋一)

 -そもそも仏教の教えとは

 この世に生まれ死ぬまでの間に人間は何ができるのか、どう生きるのか、どうあることが人として存在する意味なのか。これを考えるのが仏教の原点です。生きている間、どう幸せに生きるか、どう生きるべきかを教え、それをわれわれが考えるのが本来の教えです。

 日本の仏教は、いかに健康に、心豊かに生きるかを表裏一体と考えてきました。心と体が健やかに生きる知恵は、例えばお正月やお盆に旬の食事をいただいて健康を祈るとともに祖先の霊を癒やすなど、今も随所に受け継がれています。

 -病気との闘いで仏教が果たしてきた役割は

 多くの僧侶が、今で言うところの医学、薬学に関する知識を仏教の教えとして大陸から輸入してきました。お坊さんも、修行として傷病者の治療に当たってきました。けがや病人の治療に当たる、これには介護も含まれます。看病と介護、まさに福祉という考え方で、修行として行われてきました。

 古来、人々は病気は魂がくたびれるためと考えたようです。魂がくたびれる、疲れる、何かにとりつかれて病になるという考え方ですから、魂を元気にしてあげることが病気やけが、特に病気を治すと考えました。

 ですから、病気を治すということは心を救うことと同じ意味を持っていました。人々を救うため、僧侶は修行と捉えていたということです。

 -新型コロナは葬儀や墓参にどんな影響を及ぼしましたか

 人数を制限し3密を防ぐ葬式や法事を心掛けています。食事も一切出していません。弁当の持ち帰りはありますが、希望者だけで無理にはお願いしていません。弁当無しという法事も、今では珍しくなくなりました。葬儀の際の通夜振る舞いや忌中払いも、今年は難しくなっており、寂しいですね。

 実は人が集まって食事をするというスタイルは仏教が広めたことで、室町時代の蓮如上人が「講」や「講中」として普及させたものです。

 宝林寺には、健康、病気除けを祈願した徳本講の記念塔があります。

 -消毒などもお願いするようになった

 非接触型の体温計を購入しました。手の消毒やマスクのない人には無料で配布し、感染予防を徹底しています。お墓の代理参拝も増え、寺で行っています。

 -今後、日本はどんな方向に向かうでしょう

 かつての日本のように、地域分散型の地方が中心の時代になっていくだろうと思います。仏教がコミュニティーの中心としての役割を果たせたら喜ばしいですね。

 新型コロナウイルスは、繁栄を極めた人間に対して警告を発しているような気さえします。私たちが、当たり前だとか常識だと思っていたものの本来の価値観を一度解体して再構築していく時代に入っていくのではないかと思います。

 そんな時に寺が、場所や考えるきっかけを提供できればうれしいですね。弔いをするだけが仏教ではなく、生き方を提案する、そういう時代の仏教へと変わらなければならないと思います。

 -県内は昨年、風水害に襲われました。まるで天変地異のようでした

 仏教は、この世は浮世だと言い続けてきました。本来、安定した地に足がしっかりついたような安心な場所ではないことを訴えてきました。

 昨年秋、自然が牙をむき出して、鎮守の森の木が本堂に飛び込んでくるような恐ろしい目に遭いました。単なる自然現象というよりも、一つの警告として受け止めなければいけないのではないかと思っています。猛威を振るう台風の大型化、かつては考えられないような風速、そんな時に鎮守の森が教えてくれたものを私は昨年実感しました。自然との向き合い方で、明らかに私たち人間が、もう一度軌道修正しなければならないのは確かだと思います。

 自然災害の頻発する世の中だから、避難生活の備品などもある程度蓄えております。災害時の避難場所、命を守る場所として、これから寺が活用されなければならないと思っており、その責任も感じています。水、マスク、消毒液、食料なども備蓄して、檀家以外の人を含めて、もしもの時には寺に来て下さいと日頃から呼び掛けています。

 ◇千葉公慈(ちば・こうじ)=市原市出身。東北福祉大学学長、曹洞宗冨士山宝林寺住職。テレビ番組「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(2014~17、テレビ朝日系)での穏やかな語り口と、分かりやすい話で話題を呼んだ。いちはら観光大使。著書に『心と体が最強になる禅の食』『そうだったのか!お寺と仏教』『知れば恐ろしい日本人の風習』(いずれも 河出書房新社)、『心の花を咲かせる言葉』(双葉社)ほか。

 ◇宝林寺 戦国時代に房総で勢力を誇った里見氏ゆかりの寺。江戸時代に滝沢馬琴が書いた小説「南総里見八犬伝」のヒロイン伏姫(ふせひめ)のモデルとされる里見種姫(ふさひめ)の墓がある。


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