求めた「真実」遠く… 遺族、死刑回避に怒り 松戸女児殺害事件公判 【回顧2018取材メモから】(2)

初公判前に心境を語るリンさんの父親=6月4日、千葉地裁前
初公判前に心境を語るリンさんの父親=6月4日、千葉地裁前

 社会を揺るがす事件の判決が千葉地裁で言い渡された。昨年3月、松戸市立六実第二小3年でベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん=当時(9)=が殺害された事件。殺人などの罪で起訴された元保護者会長の渋谷恭正被告(47)は逮捕当初から黙秘を続けていたとされ、公判で何を語るのかが注目された。しかし、真実を求めていた遺族の願いはかなわず、怒りと悔しさが残った。

 事件から1年2カ月余りが経過した6月4日。初公判が開かれる千葉地裁には、傍聴席を求め400人が長蛇の列を作った。

 この日を誰よりも待ちわびた人がいた。「今日まで長かった。まだ何も分かっていない」。公判前、報道陣に対し、リンさんの父親、レェ・アイン・ハオさん(36)は心境を語った。事件発生当時から取材し続け、記者の立場でさえ初公判を「ようやく」と感じた。遺族にとってリンさんがいない日々がどれほど長く感じたことだろう。

 ようやく開かれた公判で遺族の期待は裏切られる。被告は「捜査機関のねつ造」を訴え起訴内容を全面否認。検察側は決め手となったDNA型鑑定の専門家や、捜査員を証人尋問し次々と「被告が犯人」とする証拠を突き付けたが、遺族が求めた“真実”を被告が語ることはなかった。

 真実と共に遺族が求めていたのは「極刑」。ハオさんは寒空の下、街ゆく人に死刑判決を求める署名を呼び掛けた。取材で自宅を訪れた際、床には膨大な署名済みの用紙が積み上げられ、黙々と数える姿が目に焼き付いている。

 公判でハオさんは被害者参加人として出廷し「犯人と同じ思考を持っている者へ見せしめを」と強く極刑を求めた。時には記者の視界が涙でぼやけ、思わずメモを取る手を止めそうになった残虐な犯行に対しても、一言も逃すまいとじっと耳を傾けた。

 10回にわたった審理の判決は無期懲役。求めていた極刑は回避された。ハオさんは判決後、リンさんが見つかった我孫子市の現場を訪れた。色あせた娘の遺影を見つめ、「納得できない」と悔しそうに話した。

 千葉地裁での判決は双方が控訴し、再び二審での判断が待たれる。ある日の取材で「自分は無力」とつぶやいたハオさん。遠い祖国から来日し、まな娘を奪われた。せめて、求める真実が明らかになってほしい。

(社会部・町香菜美)

◇松戸女児殺害事件 昨年3月24日に登校中のリンさんをわいせつ目的で軽乗用車に乗せて連れ去り首を絞めて殺害したとして、殺人などの罪に問われた渋谷被告に千葉地裁は7月6日、無期懲役の判決を言い渡した。弁護側と検察側双方が控訴した。


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