◆第三章 反旗(一)...
二直(にちょく)の開始は午後四時十五分。摂氏四十度を超える八月の工場内でラインが動き出せば、一分と経たぬ間に全身から汗が噴き出す。だが、目に流れ込む汗を拭うことさえできない異常な労働密度で全く同じ動作を反復すること二時間、六時十五分にようやっとベルが鳴って十分間の休憩となる。
矢上(やがみ)は肩で息をつきながら一番近いドアから屋外へ出ると、膝をあげるのも面倒なほど重い足でアスファルトの敷地内通路を横切り、フェンス際の草地に腰を下ろした。それから、あらかじめそこに置いてあった紙袋から一リットル入りのペットボトルを取り出し、喉を鳴らして一気に半分を飲んでようやく一息ついた。始業前から外に置いてあるから温い水だが、一刻も早く飲みたい気持ちの方が遙かに勝る。
隣を見ると、脇(わき)が一抱えもある巨大なペットボトルを両手で持ち上げ、流れ込む水の勢いに負けまいと頬をめいっぱい膨らませて飲んでいた。
「おまえさ、そんなにデカいボトル、かえって飲むの大変じゃないか?」
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