
コロナ第7波の急拡大で保育園のクラスター(感染者集団)が続発する中、千葉県は園児の濃厚接触者を特定しない方針に切り替えた。保護者の就労への影響を回避し社会経済活動を優先するのが狙い。濃厚接触の特定に追われていた保育の現場や保護者からは歓迎の声が聞かれる一方で、「無症状で感染を広げてしまうのが怖い」との不安も漏れる。県内保育園の現状と関係者の声を取材した。(報道部 福田淳太)
ハイフライヤーズ(千葉市中央区)が運営する保育園「キートスチャイルドケア桜木」(同市若葉区)では、16日~18日の連休終盤ごろから園児や保護者の感染が急増。
同園職員らが室内設置のカメラのデータを見て、昼寝や食事時に感染者と距離が近かった園児を「濃厚接触者候補」としてリストアップし、市に報告。昼夜を問わず作業に追われたという。
同社の日向美奈子キートス統括園長は「特定に時間がかかり、出社の可否を判断できない保護者からの問い合わせも相次いでいた」と県の方針見直しを歓迎する。
同園系列の「キートスチャイルドケアおゆみ野南」(同市緑区)の保護者も賛成。同区の看護師、一ノ清彩花さん(27)は「保育園では子どもが密集し、共有のおもちゃを触る。実質的に濃厚接触者を判断するのは難しい」と納得した様子。
一方、不安の声も聞かれた。同区のパート、岡田未奈さん(29)は「無症状のまま感染を広げてしまうのが一番怖い。できれば特定を続けてほしい」と要望。
同区の無職、阿部真規さん(31)も「感染者がこれだけ多いと仕方ない」と理解を示すが、「夫の職場は家族に濃厚接触者が出ると出社できない。これからは自分で判断しなければ」と困惑する。
千葉大病院の猪狩英俊・感染制御部長は取材に「濃厚接触者を追跡をしないというのは社会がコロナを容認していく一つの要素でもあるが、患者と接する病院としては困る」とした。
県疾病対策課によると、オミクロン株の流行に伴い、県内でも今月中旬から保育園や幼稚園のクラスターが相次いでいる。これまで、園内で感染者が発生し濃厚接触者に特定された園児は原則7日間の待機が必要だった。