上映作どう決まる? 鍵は配給会社の〝熱〟と〝数〟 映画通のオアシス「千葉劇場」舞台裏 名作生むのは観客

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「夜明け」の初日舞台あいさつをする柳楽さん(右から2人目)=1月18日、千葉市中央区の千葉劇場
「夜明け」の初日舞台あいさつをする柳楽さん(右から2人目)=1月18日、千葉市中央区の千葉劇場
上映作品の選び方について語る鴫原支配人
上映作品の選び方について語る鴫原支配人

 シネコン(複合映画館)全盛のご時世で、いまなお根強い人気を集めるミニシアター。スクリーンに映じる作品はどう選んでいるのだろう? 素朴な疑問を胸に劇場の“舞台裏”をのぞくべく、国民的俳優が主演する話題作から、海外のマイナー作品まで幅広く上映する「千葉劇場」(千葉市)の鴫原光希支配人(35)を訪ねた。上映作品の選択には意外な秘密があった-。

(政経部・金林寛人)

 1月18日夕、老若男女がロビーにあふれかえっていた。“映画通”のオアシス・千葉劇場が活気づく光景だ。整理番号を読み上げ、客席に一人一人導く鴫原さん。スタッフ総出で観客を迎えている。一体何が始まるのか。

 旭市などがロケ地になった邦画「夜明け」(広瀬奈々子監督)の初日舞台あいさつだった。主演の演技派俳優、柳楽優弥さんらの登壇に、2回のあいさつとも約100席がファンで埋まった。

 ゲストはかつてないビッグネーム。鴫原さんは「配給会社から『千葉市の中心地で舞台あいさつを』というオファーがあった。不安もあったが、お客さんが喜んでくれて良かった」と満足げ。舞台あいさつに訪れた同市の主婦、森本環さんは「アットホームな雰囲気の中、有名俳優を間近に見られて良かった」と頬を紅潮させた。

◆年間60本

 現在、1日2~4作品、年間55~60本の良質な映画を上映している。洋画が8割で、邦画は2割。作品の選択権は鴫原さんにある。年間で100回近くの試写に足を運び、自宅でもサンプルDVDを視聴。しかし「自分が見て面白いから上映しようというのは1割もない」と明かす。

 上映の判断基準はあくまで配給会社の“熱意”と“数字”だからだ。十数の配給会社が、千葉劇場の特徴を理解した上で作品を売り込んでくる。「作品に込める思いは配給会社の方が絶対強い。その熱を感じた時に決める」。推す作品は宣伝にも力が入るという読みもある。

 過去に上映した類似ジャンルや同じ監督、俳優による作品の入場者数も重要だ。「ドライに聞こえるかもしれないが、来場者数こそお客さんの評価。名作を作るのは観客。自分が好きな映画を上映する劇場であってはならない」

 映画の売り上げは配給会社と劇場で半分ずつ。客入りが好調なら、上映期間は延びる。6~7週続いた作品もあったが、1週で終わることもある。入場状況などについて、他の映画館と情報交換する。毎週が真剣勝負だが、「もし失敗しても、翌週に別の作品で再挑戦できる」とも。

◆顧客主義

 徹底した“顧客主義”はサービス業出身のバックボーンがあるからだ。鴫原さんは高校を卒業後、チェーン飲食店で店長を1年ほど務めた。勤務していた店舗が閉店し、グループ会社の映画館に配属されたことから、映画に携わるように。「業界には映画マニアが多いが、自分はそこまでではない」と笑い、時にはスタッフに意見を仰ぐ。

 全国で減っているミニシアターが千葉市内にあることを誇り、戦前から続く千葉劇場を未来に残すことを最大の目標に掲げる。そのために「自分でなく、お客さんに喜んでもらえる映画を上映し続ける」と力を込めた。