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わが子の名前読めますか 戸籍フリガナ制度1年 経緯や字義も考慮 千葉県内自治体、辞書手に慎重判断

2026/7/3 5:00 (7/7 18:02更新)
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 わが子の名前は、初めて見た人にも読んでもらえるだろうか-。戸籍に氏名のフリガナが記載される改正戸籍法の施行から1年を迎えた。名前の読み方には、漢字の読みや意味との関連性が求められるようになり、千葉県内自治体には、出生届に記す名のフリガナを巡り「この読み方で受理されるのか」といった相談が寄せられている。職員は辞書や名付け本を開き、時には保護者の思いも丁寧に聞き取りながら、慎重に判断している。制度上の基準と、名前に込めた願いに向き合う窓口対応を追った。 

(山崎恵) 

 「出産を控えているが、この名前で大丈夫か」

  船橋市役所の戸籍窓口には、昨年5月の制度開始後、出生届の名のフリガナを巡る相談が寄せられるようになった。電話やメールのほか、直接窓口を訪れる人もいる。改正法の施行当初はテレビ番組やニュースで制度が取り上げられる機会も多く、不安を感じた保護者や家族からの問い合わせが多かったという。

  改正法では、氏名のフリガナについて「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているもの」との基準が設けられた。法務省は認められない例として「太郎」を「ジョージ」や「マイケル」、「高」を「ヒクシ」などと読ませるケースを示している。漢字の意味や読み方との関連性がないものや、別の人名と誤解される読み方、漢字の意味と反対の読み方は認められない。 

 「読み方を先に決めた上で、『この漢字は使えますか』と相談される方も多かった」。日々、窓口で出生届などに対応する船橋市戸籍住民課の北川亮太さん(31)は振り返る。同市は制度開始に合わせ、男児用、女児用の名付け本を購入。漢字辞書も確認し「この読みで大丈夫ですよ」などと伝えている。

 ◆受理の「根拠」探す

  一般的には読まないフリガナの場合に確認を行うと「きょうだいと読み方を合わせたい」と説明を受けることが多い。例えば、上の子2人が制度開始前、同じ漢字について同じ読み方で受理されていた場合、3人目だけ「読めない」とされれば、家族の思いはどうなるのか。同市では「きょうだいの名前も一つの根拠」として受け止め、希望に沿えるよう判断している。

 

  漢字の音訓だけでなく、漢字が持つ意味「字義」も根拠になる。例えば「陽」の字に「ひなた」という読みはないが、辞書に字義として「ひなた。あたたかい」と載っているため「陽=ひなた」の読みを認めている。「親御さんがどのような思いで、その漢字と読み方を選んだのかを大切にしています」と北川さん。

  どうしても読めず、根拠も見当たらない場合はフリガナや漢字を改めて検討してもらうこともある。保護者側も「これが難しければ、こちらの漢字で」と別の候補を用意しているケースがあったといい、同市ではこれまでにフリガナを理由に出生届の受理に至らなかった事例はないという。 

◆不安与えぬ配慮

  窓口で特に気を配るのは、届出人を不安にさせないことだ。出生届を受け取った瞬間、名前の読み方について確認が必要だと感じることもある。それでも、その場で否定的な言葉はかけない。「まずは本籍の情報などを確認してきます」と書類を一度預かり、見えないところで名前辞典を開く。そんな配慮も欠かさない。

  判断に迷うときは、まず辞典を開き、それでも難しければ職員同士で知識を出し合って受理できる根拠を探しているという。北川さんは「読み方について悩んだり、諦めてしまったりする前に、まずは相談してほしい。なるべくそのまま認められるよう力を尽くしたい」と呼びかけている。

      ◇     ◇ 

 戸籍フリガナ制度の開始から1年。県内自治体では、珍しい読み方を機械的に退けるのではなく、名付けに込められた思いを聞き取り、受理できる根拠を探す対応が続いている。

 

  「出生届はおめでたい届け出。マイナスな部分はできるだけなくしたい」。船橋市戸籍住民課の北川亮太さん(31)はそう話す。名前やフリガナには、届出人や親族が時間をかけ、願いや希望を込めていることがほとんどだ。「子どもの利益を最優先に考え、社会を混乱させるものや社会通念上相当とはいえないものでない限り、なるべくそのまま認められるよう心がけています」。 

◆根拠、多面的に 

 こうした対応は船橋市だけではない。千葉市、松戸市、柏市、市川市などでも、出生届のフリガナについて問い合わせや相談に柔軟に対応している。

  千葉市は「届出人の命名に対する思い入れを損なわないように、できる限りの対応を尽くしている」と説明。柏市も「想いを込めて命名された名前。意向に沿ったもので受理できるように」と、複数の辞書などで多面的に読み方を確認している。

  松戸市の担当者は、一般的には読まないフリガナでも、例えば「花が咲いた際のイメージの音にした」など、どのような経緯で漢字と読みを関連づけたのかしっかり説明されれば、その読み方で受理することが多いと明かす。

  自治体が判断に迷う場合は、法務局への照会を行うこともある。県内自治体でも、辞書や名付け本で調べたり、職員同士で協議したりした結果、照会することになったケースが数件あった。ただ、取材した範囲では、いずれも「受理して差し支えない」との回答だったという。

 ◆読まれ方意識

 

 名前の読み方は、わが子の名付けを考える保護者にとって切実な問題だ。

  昨年12月に長男を出産した八千代市の30代女性は、名前を決める際、初対面の人にも読み方が伝わりやすいことを重視した。「自己紹介でも読んでもらいやすい名前がよかった。読めない漢字を無理やり当てるのは嫌だった」と話す。

  長女も同じ冬生まれだったことから、季節にちなんだ漢字を使いたいと考えた。まず漢字を決め、画数の良い組み合わせを探した。読みやすさに加え、画数が少なく書きやすいこと、周囲とかぶりにくいことも重視したという。

  スマートフォンで一度に変換できるかも、大事な条件だった。「子どもの名前はLINE(ライン)でしょっちゅう打つ。変換一覧から探したり、別の読み方で漢字を出して一文字消したりするのは避けたかった」。 

 名付けではインスタグラムなどのSNSも参考にした。名前に関する助言を発信するアカウントがあり、候補の名前について読めるか、読めないかを相談する人も多く、名付けへの関心の高さを感じたという。

 ◆保育士の実感

  昨年10月に次男を出産した県内在住の30代女性も、読みやすさを意識した一人だ。名前はまず「読み」から決めた。長男の名前に合わせ、きょうだいで響きをそろえたかったからだ。

  長男の名前は漢字の読み方が複数あり、初対面の人から別の読み方で呼ばれることもあった。その経験から、次男は「万人がそうとしか読めない名前にしよう」と考えた。

  女性は保育士でもある。仕事で子どもの名前に触れる中で、書類を見て「この漢字でこう読むんだ」と驚くことも増えた。書類にはふりがながあるため確認できるが、なければ本人や保護者に聞かなければ分からない場面もある。「名前の読み方を人に聞くのは、やはり少し抵抗がある。職業柄、読みやすさは大切だと感じる」。

 ◆機械的に退けず

  一般的な読み方とは異なる名前は、インターネット上などで「キラキラネーム」と呼ばれ、話題になることもあった。一方で、子どもの名前を考える保護者は、響きや漢字に込める願いだけでなく、初対面での読まれ方や日々の使いやすさにも思いを巡らせることがほとんどだ。

  名前は、日常生活で何度も使われ、家族の願いや本人のアイデンティティーにも関わる。読みやすさと、名付けに込めた思い。保護者も、戸籍を扱う現場も、その両方を大切にしながら名前の読み方に向き合っている。

    ◇    ◇

  千葉日報では、名前の読み方や名付けに関する体験談を募集しています。「出生届の名前の読み方について説明を求められた」「受理されるか不安だった」「自分の名前を読み間違えられるのがつらい」-などの経験を、専用フォーム(https://forms.gle/3xKzsgDyM2v1bS4b8)からお寄せください。