◆第三章 反旗(八)...
食堂に着くと、矢上と泉原はいつものように券売機の列に並んだ。前方から村上とその取り巻きたちが憎々しげにこちらを振り返ってなにやら囁き合っていた。どのみち意趣返しを企んでいるのだろうが、その時はその時だと矢上は腹を括っていた。
それよりもやはり、玄羽がいつも座る席が空いているのが気になった。
班長以上の役職の社員は、配膳台から近い窓に面したエリアで食事を取るのが慣例となっていたが、玄羽を避けるように、その隣にも正面にも座る者はいつもいなかった。しかし、玄羽は別にそれを苦にするふうでもなく、たいてい日替わり定食を一人で旨そうに食べていた。
とはいえ、さすがにこの時期は暑さと疲労で食欲も消え失せ、冷たい麺しか入らない工員がほとんどで、玄羽も矢上たちも例外ではなかった。矢上は自分と脇と玄羽の冷やしうどんの食券を買い、泉原が秋山のを買って、それぞれ二人分のトレーを卓に運んで席に着いた。
玄羽の食券は、来たらすぐ渡せるように胸ポケットに入れてあった。場合によっては医務室まで冷やしうどんと茶を運ぶことを考えて、矢上と泉原は先に食べ始めた。
「五十畑さんも食堂に来てないですね」
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