◆第三章 反旗(四)...
咄嗟(とっさ)に人を掻き分けて矢上が前へ出ると、泉原がじっと俯(うつむ)いたまま身を固くして立っており、その足下に名前の書かれたペットボトルが転がっていた。蓋の取れたボトルから水が流れ出て、草を濡らして広がっている。
傍らに本工の村上征次(むらかみせいじ)が格好の獲物でも見つけたような嬉しげな顔をして立っていた。食堂で気の弱い非正規を見つけては、列から追い出して後ろに並ばせるあの男だ。その手には一リットル入りの水のペットボトルが握られており、ボトルには秋山の名前が書かれていた。秋山が少し離れて棒立ちになっている。ボトルが秋山から奪い取られたのは明らかだった。
村上が泉原の顔を下から覗き込むようにして言った。
「なに勝手な真似してんだよ。ちゃんと自販機のとこ行って、俺らの後ろに並べよ。ウォーターサーバーも用意してやってるだろうが。おい、何とか言えよ」
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