地元歌う愛されキャラ 「音楽で人を笑顔に」 手賀沼ジュン 【届けこの歌 ちばミュージシャン物語】(5)

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手賀沼のほとりで、インパクトのある歴代ギターとは異なりシックな愛器をかき鳴らしながら歌う手賀沼さん
手賀沼のほとりで、インパクトのある歴代ギターとは異なりシックな愛器をかき鳴らしながら歌う手賀沼さん

 「これからは地方の時代だ。地元のために歌いなさい」。柏市が生んだ偉大なミュージシャン、サンプラザ中野くんのありがたい言葉とともに授かった芸名で活動するのは、手賀沼ジュンさん(38)だ。

 高校・大学、以前の芸能事務所の先輩の忠告を守りすぎたのか、かつてリリースしたマキシシングル「柏のうた」で、地元を愛する強烈な写真をジャケットに採用。手賀沼に漬かる手賀沼ジュン…。先輩のパッパラー河合さんは「今まで見たCDジャケットの中で一番笑った」と大うけした。

 柏や千葉を積極的にテーマに取り上げ、5曲を世に送り出した。地元を走るJR線が舞台の「二人は常磐線」ではフリーアナウンサーの岡田亜紀さんとデュエット。昭和のムード歌謡風のラブソングで柏駅前のディスプレイでも放映され、市民に親しまれている。

 岡田さんとのデュエット第二弾の「恋して手賀沼」では、手賀沼で出会った男女の恋物語をピアノやストリングスの美しい旋律に乗せ、メルヘンチックに歌い上げる。

 “もう水質汚染ワースト1じゃないから。これからはもっときれいになっていくね”

 「ふるさと公園」「手賀曙橋」なども歌詞に取り入れ、地元色満載。“テガジュン”ご当地ソングの代表作だ。「地元住民のコンプレックスになっている汚い沼のイメージを変えたかった」。熱い使命のためなら、手賀沼に漬かるのだって厭(いと)わない。

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 早大在学中にはお笑いにも手を出し、小島よしおさんらとのグループ「WAGE」で2001年に芸能界デビュー。06年に解散すると、「やっぱりやりたいのは歌だ」と音楽への気持ちがよみがえった。

 「とにかく人を笑顔にしたい」。苦楽を共にした初代ギターは、一度見たら思わず噴き出す“落書き装飾”。国民的人気キャラに似たデザインだったため、中野さんらから「怒られるからやめなさい」とやり過ぎのいたずら心をたしなめられた。

 音楽でも、コミカルなのに哀愁が漂う独特の世界を繰り広げる。活動初期から知る柏市のデザイン業、東洋平さん(46)は「笑える曲にも、どこか深く考えさせられるところがある」と魅力を話す。

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 目指すのは難しいことを分かりやすく表現し、子どもも大人も楽しめる音楽。

 “僕の時給は1280円。うまい棒128本分の1時間”

 カントリー調の「うまい棒」では誰もが知る菓子を切なくも陽気に歌う。「自分の生活や経験から作った曲は、自然と聴いた人の心を打つ」という。

 12年からは演歌やラップ、ハードロック風の演奏で歌う回文(上からでも下からでも同じ音で読める文)に挑戦。

 “私、女子会にイカ所持したわ”“住まい柏でワシ買います”

 テレビ番組に出演し、回文ミュージシャンとしてまさかの優勝。「歌ネタ芸人として活動すれば」と言われても、「ネタではない歌を作りたい」と、目指すは正統派ミュージシャンだ。

 「聴いた人が幸せな気持ちになるような、温かい音楽を日本中に届けたい」と活動の場を県外にも広げる。

 柏のファンが「テガジュンに芽が出てほしい」と切望し、中野さん、河合さんらにも支えられる愛されキャラが、今日も哀愁を漂わせる。

(社会部・金林寛人)

=おわり

◇手賀沼ジュン(てがぬま・じゅん) 1979年7月24日生まれ。父親の仕事の関係でネパールで生まれる。本名は野中淳(のなか・じゅん)。11歳の時から柏市に住む。早稲田大学在学中に、小島よしおさんらとお笑いグループ「WAGE」でデビュー。2006年からミュージシャンとして活動を始める。大ファンである「ドラえもん」の劇場版主題歌を歌うのが夢。