2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

溥傑・浩と稲毛 (一)

 浅間神社門前を通り、道なりに左方にカーブすると、進行方向左側に「愛新覚羅溥傑仮寓」の表示があった。

 神社の一隅に付随しているようで、あるいは置き忘れられているようで、一人で行ったのでは気付かなかったろうが、この日は強力なガイド付きだった。

 こうした歴史物件に強い奥井定男氏に従い、邸内に入って瞠目した。庭の松も手入れされ、下方には牡丹、芍薬、石南花らが花盛りだった。

 庭同様に小体ながら、曲がり屋ふうの平屋建ても、つましく清潔で、奥ゆかしさがあった。

 裏へ通ずる小道をはさんで離れがあり、ふと、溥傑(ふけつ)・浩(ひろ)ご夫妻の隠れ家がイメージされた。

 実業家の別荘を、千葉市の歩兵学校に通学していた溥傑が、浩とのハネムーン用に借りたということだが、母屋とは別の小さな一間にも、ラブストーリーが感覚された。

 いまは千葉市が管理しているようで、職員が派遣されていて、私らを室内に招じ入れてくれた。そんなときも、奥井氏は「顔」である。

 その「顔」のおかげさまで、禁じられている浴室も見学できた。洗い場には大理石が張られて、美麗なものだったが、浴槽は除去されていた。

 トイレには陶器のスリッパが固定されていたが、気が引けて、足を乗せてみなかった。

 L字型の屋内は三室に分かれ、第一室では、中国清朝のラストエンペラー溥儀(ふぎ)の実弟・溥傑と、その夫人・浩のメッセージを伝える。

 浩夫人が詠んだ日中友好の歌があった。

 からくにと 大和のくにがむすばれて

  永久(とわ)に幸あれ 千代に八千代に

 波乱の人生に翻弄されながらも、日中の架け橋になりたいという夫人の思いが伝わる。...


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