かけてみただけ電話

  • LINEで送る

 電話がかかってくる。

 「もしもし」

 受ける。

 「何かご用でしょうか」

 答える。

 「用はありません。ただかけてみただけ」

 こちらは心中に舌打ちをして、電話を切るだけ。

 これは私の実体験だが、知人らの中にもそうした体験者は多いようだ。

 こうしたいたずらは、赤の他人のものではない。といって親友のあそびでもない。サークルや飲み屋で隣席に座った程度の面識者、といったところだ。

 二度、三度、そんなからかいの電話がかかってくると、もしかしたら、本物のきずなで結ばれたいのか、と思い、会ってみると、やはり電話同様で、ただ会ってみただけ、となる。

 それでも、なんとなくこちらの触感としては、サークルの隣席に座っただけの顔見知りというより、神経の何本かで、くっつき合える予感を持ったりする。

 時には懐かしさの情感さえ満ちてくるのだが。

 「用はない、かけてみただけ」「会ってみただけ」でヘラヘラ笑われたのでは、きずなの結ばれる余地がなくなる。

 さらに根本的には、これらのとぼけた応答を、例えば嘲弄(ちょうろう)と取るか、ユーモアと取るかで評価が分かれる。

 多忙でいらいらしているときに、こんなあほくさい電話でからかわれたり、間抜け扱いされたりしたら、気分としては先方を殺したくなるだろう。

 ただしユーモアとして取れば、好感度とまではいかなくても、少々「ニヤリ」とするくらいできる。きげんのいい時間帯だったら、いたずらのセンスとして受容できるかもしれない。......