
千葉大は、大学院医学研究院の元特任研究員の30代男性=中国籍=らが執筆した2本の医学論文で、研究結果の画像を改ざんするなどの不正があったと発表した。同大は5月、男性に2本の論文の取り下げを勧告したが、男性は応じていない。うち1本は大学院博士課程の修了に必要な博士論文で、9月29日付で男性の博士号を取り消した。同大で研究不正を理由とした学位の取り消しは初めて。
同大によると、論文はいずれも泌尿器などのガン進行に関わるタンパク質を解析したもの。2020、21年に自然科学系の英学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。実験結果の画像を上下反転させ切り貼りしたり、同じサンプルのデータを使い回したりしていたとして、同大の調査委員会が不正を認定した。
男性は17年4月~20年9月まで同大大学院博士課程に、20年10月~22年3月までは医学研究院の特任研究員として在籍していた。22年に不正とは関係なく、任期満了で退職している。男性は同大の調査に「故意に行っていない」などと答え、論文取り下げの依頼には「反論することがある」として応じていないという。
調査委は、男性の研究を指導する立場で論文の責任著者だった男性准教授と、男性が所属する研究室を主宰し論文最終著者だった男性教授=定年退職=の2人の監督責任も認定した。准教授は10年間の保管が求められている実験ノートも紛失しており、同大は今後処分を検討するとしている。
文部科学省に匿名の告発があり発覚した。同大広報室は「このような事態が発生したことは誠に遺憾で厳粛に受け止めている。全学を挙げて研究倫理のより一層の徹底と研究者の意識向上を図り再発防止に取り組む」としている。
(中田大貴)




