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多くの病状があるがんの中で、女性が最も多く発症しているのが乳がん。がん研究振興財団が公表している「がんの統計2025」によると、2020年に全国で新たにがんと診断された女性は約9万1000人で、女性の新規がん患者数全体のおよそ22%を占める。八千代市で料理教室「スマイルキッチン」を主宰する仲野香織さん(50)は乳がん治療を受ける当事者の立場で、乳がん患者同士のコミュニティーを作ろうと精力的に活動している一人だ。「患者が気軽に話せる場所を」。孤独を減らすため模索を続けている。
(平嶋奏葉)
仲野さんが同教室を当初開業したのは岡山県内。2010年に同県から八千代市に転居し、同時に教室も移転した。当初は講師を招く形で教室を開いていたというが、移転を機に自ら包丁を握って教えるようになった。教室名は、キッチンに立つ人が笑顔になれるようにという思いから名付けた。
仲野さんに乳がんが見つかったのは昨年の1月。市の検診を受診したところ、右胸に小さなしこりが見つかり、大学病院での検査でがんと診断された。仲野さんは乳がんの患部切除と同時に、腹の脂肪を使って乳房を再建する「同時再建術」を選択。同年6月に手術を行ったが、胸の鬱血(うっけつ)や紫斑が続き、移植した脂肪の大部分を除去した。現在はホルモン療法で長期的な治療を続けている。
乳がん発覚当初から、自身の病状や日常をブログで発信していた仲野さん。そのブログを読んだ乳がん患者の女性らから、本来は料理教室の情報発信に使用している公式LINE(ライン)アカウントに、がんに関する相談が多数寄せられたという。仲野さんは「私は顔も名前も出して発信しているが、他の乳がん患者にそういう人は少ない。がんのことを家族にすら言えていない人もいる。誰かに話を聞いてほしいんだと思う」と推し量る。
現在はその経験をもとに、乳がん患者同士が気軽に交流できる場を作ろうと、オンライン上で「ズームおしゃべり会」を主催している。参加者は抗がん剤治療中の女性が多く、仲野さんは会の雰囲気を「ウィッグの手入れや薬の副作用の話など、情報交換がメイン。あまり湿っぽい感じにはならなくて、笑いが多い」と説明する。
こうした交流をきっかけに料理教室に参加するようになった女性たちもいる。一方で、スケジュールの兼ね合いもあり、おしゃべり会の開催は月1~2回に限られる。会の中では「おしゃべり会に参加していない日は泣いてしまったり、すごく落ち込む日もある」と明かす人もいるといい、仲野さんは少しでもそんな不安を減らそうと、協力者を募って会の回数や規模を広げることも考えているという。「『ちょっときょう、おしゃべりしてみようかな』みたいな感じで参加できるようにしたい」と展望する。
10月は、乳がんに関する正しい知識の普及や、検診の受診が呼びかけられる「ピンクリボン月間」。仲野さんは、定期的な検診でがんを発見できた経験を踏まえ「症状があってもなくても検診には行ってほしい」と強調する。「セルフチェックをしていても、私の場合はそれでは見つからないタイプのがんだった。だから検診はとても大事だと思う」と話し「女性は自分のことを後回しにしてしまう人が多いけれど、この月間は『毎年検診に行く』と決めて予約してほしい」と呼びかけた。





