銀幕への誘い


担い手育つ“理想郷” みんなの学校 喜怒哀楽捉えた絶妙カメラ

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映画「みんなの学校」より(C)関西テレビ放送

 大阪市内の住宅街にある市立大空小学校。朝、校門から児童の元気なあいさつの声が響く。開放的な校舎での授業。でも、よくある景色と少し違う。全校児童の1割超を占める特別支援が必要な児童も各学年で学んでいるのだ。

 開校7年目。「すべての子どもの学習権を保障する」をスローガンに保護者らの支援を積極的に受け、誰でも通える学校をつくってきた。故に不登校はゼロだという。児童同士が助け合い、先生も互いに支え一緒に成長していく“理想郷”に、報道カメラマン出身の真鍋俊永監督が2012年から1年間密着。それぞれの喜怒哀楽を絶妙なカメラワークで捉え、成長する児童と頼もしさを増す教師を記録した。

 戦後、地域コミュニティーの中心的な役割を担ってきた学校。学歴社会とともに学力偏重傾向がみられることもあった。同小には地域の人々もボランティアとして参加しており、顔の見えずらい情報化社会で人間関係を築く絶好の場となっている。人生で未成年期と高齢期は地域への帰属制が高い。今後、進むとみられる少子高齢化社会で同小の取り組みは象徴的になるのではなかろうか。

 その原動力となるのは児童・先生へアンテナを張り、問題が起きれば即座に行動する女性校長だ。児童に膝をつき合わせ、善を説き悪を正す毅然(きぜん)とした態度。わがままな悩みであっても徹底的に耳を傾け、児童の可能性を最大限に引き出そうと模索する。その目線は新米教師にも向く。指導が難しいのは承知の上で、厳しい言葉をぶつけ、親身になって相談に乗る。全ては良い学校をつくるため。信頼される教師像を実践してみせている。

 絵空事のような感を禁じ得ない本作。監督は校長のインタビューで説得力を与える。最初から崇高な理念があった訳ではない。開校時、大騒ぎしていた転入生を思い出し「この子さえいなかったら…」と言葉を詰まらせる。その児童の見違えるほど立派になった姿に触発されて今があるのだという。

 2018年度から道徳が教科化される。「道徳教育とは児童に今後の生き方について気付きを与えるもの」と筑波大付属小学校の山田誠教諭のコメントが本紙の教育面にある。同小の日常は道徳の授業のようだ。国際化が進み多様化する社会。さまざまな個性を持つ人がおり、助け合い、受け入れ、調和して暮らして行く必要がある。同小の児童なら、これからの時代の担い手にふさわしい存在になれるだろう。

 近年、保護者の意識は変わり、地域や人とのつながりを重視する傾向があるという。1時間半超の授業参観にはこれからの時代を生き抜くヒントが隠れている。(廣)

 【メモ】14年日本。上映106分。都内の渋谷・ユーロスペースにて3月20日まで公開中、ほか全国順次公開。