国立大学法人千葉大学
千葉大学大学院医学研究院 中川 良特任准教授、加藤 順准教授らの研究グループは、大規模健診施設における約5万人のリアルワールドデータ(注1)を用いて、人工知能(AI)支援システム(注2)を用いた上部消化管内視鏡検査が、胃がんの発見率を有意に上昇させ、生体検査の陽性的中率(注3)も向上させることを明らかにしました。従来、AI支援内視鏡の有効性は主に録画画像を用いた研究で検証されてきましたが、本研究は実際の健診現場における有効性を、大規模データを用いて世界に先駆けて示した点に大きな意義があります。今後は、AI支援内視鏡の普及や、術者経験を補完する教育ツールとしての活用を進めることで、上部消化管がんのより早期かつ確実な発見に貢献していく予定です。
本研究成果は、2026年5月1日に国際学術誌Digestive Endoscopyに掲載されました。
(論文はこちら: 10.1111/den.70159)

図 AIの有無による胃がん発見率、胃・食道がんの陽性的中率の比較
■研究の背景
上部消化管がんは早期発見により内視鏡治療による根治が可能ですが、内視鏡検査では一定のがんの見逃しが存在します。近年、病変をリアルタイムに検出する内視鏡用のAI支援システムが開発されていますが、臨床での有効性を示した大規模研究は限られています。そこで本研究では、健診施設の大規模データを用いて、AI支援システム導入前後でのがん発見率を比較し、その有用性を検証しました。
■研究成果のポイント
本研究では、大規模健診施設において2021年4月から2024年3月の3年間に上部消化管内視鏡検査を受けた49,980人を対象に、AI支援システムが導入された2023年4月の前後で比較解析を行いました。AI導入前を「非AI群」(32,318人)、導入後を「AI群」(17,662人)とし、傾向スコアマッチング法(注4)を用いて、17,662組を抽出して比較しました。 その結果、胃がんの発見率はAI群で0.10%、非AI群で0.03%と、AI支援システム導入後に約3倍に有意に上昇しました(図左)。また、生体検査の陽性的中率(生体検査を行った症例のうち実際にがんと診断された割合)も、胃・食道がん合計でAI群4.84%・非AI群2.16%と有意に上昇し、AIの導入によって「より診断につながる生体検査」が行われていることが示されました(図右)。 さらに、AI群で発見された胃がんは非AI群と比べてサイズが有意に小さく、特に10mm以下の小病変の検出が多く見られました。これは、AI支援内視鏡がより早期段階で胃がんを発見していることを示唆しています。 加えて、検査時間はAI群7.22分・非AI群7.37分とAI導入によりむしろわずかに短縮しており、AIの導入が検査の負担増につながらないことも確認されました。
■今後の展望
今後は、本知見をもとに、AI支援内視鏡の住民検診や職域検診への展開、術者経験を補完する教育ツールとしての活用、さらには食道がんなど他のがん種に対する有効性検証へとつなげることで、上部消化管がんのより早期かつ確実な発見と、患者さんの予後改善に貢献していく予定です。
■用語解説
注1)リアルワールドデータ:病院や健診施設などで日常診療を通じて集められる医療データのこと。臨床試験のように厳密に選ばれた集団ではなく、実際の医療現場で得られた多様な患者・受診者のデータを含むため、より現実の医療を反映した解析が可能となる。
注2)AI支援システム:人工知能(AI)を用いて内視鏡画像をリアルタイムに解析し、がんが疑われる領域を画面上に表示して内視鏡医の診断を支援するシステム。本研究で用いたシステムは、胃の腫瘍性病変や食道扁平上皮癌の疑い領域を表示する機能と、観察すべき胃の主要部位の撮影状況を自動確認する機能を備えています。
注3)陽性的中率:検査で「異常あり(陽性)」と判定された人のうち、実際にその病気である人の割合。本研究では、生体検査(組織検査)を行った症例のうち実際にがんと診断された割合を指し、値が高いほど不要な生体検査が少なく、診断につながる生体検査が多く行われていることを意味する。
注4)傾向スコアマッチング法:観察データにて、一定の項目をそろえて対象者を抽出することで、対象群に対する介入群(調査対象)の効果を公平に見る方法。本研究では介入群をAI群、対象群を非AI群として年齢・性別・喫煙・飲酒・ピロリ菌感染歴・内視鏡医経験年数・前年内視鏡受診歴をそろえて調査した。
■論文情報
タイトル:Impact of Artificial Intelligence-Assisted Endoscopy on Screening for Upper Gastrointestinal Cancer in a Large-Scale Health Screening Facility
著者:Chihiro Goto, Ryo Nakagawa, Ryosuke Horio, Akane Kurosugi, Tatsuya Kaneko, Tsubasa Ishikawa, Yuki Ohta, Takashi Taida, Kenichiro Okimoto, Tomoaki Matsumura, Jun Kato
雑誌名:Digestive Endoscopy
DOI:10.1111/den.70159
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千葉大学大学院医学研究院 中川 良特任准教授、加藤 順准教授らの研究グループは、大規模健診施設における約5万人のリアルワールドデータ(注1)を用いて、人工知能(AI)支援システム(注2)を用いた上部消化管内視鏡検査が、胃がんの発見率を有意に上昇させ、生体検査の陽性的中率(注3)も向上させることを明らかにしました。従来、AI支援内視鏡の有効性は主に録画画像を用いた研究で検証されてきましたが、本研究は実際の健診現場における有効性を、大規模データを用いて世界に先駆けて示した点に大きな意義があります。今後は、AI支援内視鏡の普及や、術者経験を補完する教育ツールとしての活用を進めることで、上部消化管がんのより早期かつ確実な発見に貢献していく予定です。
本研究成果は、2026年5月1日に国際学術誌Digestive Endoscopyに掲載されました。
(論文はこちら: 10.1111/den.70159)

図 AIの有無による胃がん発見率、胃・食道がんの陽性的中率の比較
■研究の背景
上部消化管がんは早期発見により内視鏡治療による根治が可能ですが、内視鏡検査では一定のがんの見逃しが存在します。近年、病変をリアルタイムに検出する内視鏡用のAI支援システムが開発されていますが、臨床での有効性を示した大規模研究は限られています。そこで本研究では、健診施設の大規模データを用いて、AI支援システム導入前後でのがん発見率を比較し、その有用性を検証しました。
■研究成果のポイント
本研究では、大規模健診施設において2021年4月から2024年3月の3年間に上部消化管内視鏡検査を受けた49,980人を対象に、AI支援システムが導入された2023年4月の前後で比較解析を行いました。AI導入前を「非AI群」(32,318人)、導入後を「AI群」(17,662人)とし、傾向スコアマッチング法(注4)を用いて、17,662組を抽出して比較しました。 その結果、胃がんの発見率はAI群で0.10%、非AI群で0.03%と、AI支援システム導入後に約3倍に有意に上昇しました(図左)。また、生体検査の陽性的中率(生体検査を行った症例のうち実際にがんと診断された割合)も、胃・食道がん合計でAI群4.84%・非AI群2.16%と有意に上昇し、AIの導入によって「より診断につながる生体検査」が行われていることが示されました(図右)。 さらに、AI群で発見された胃がんは非AI群と比べてサイズが有意に小さく、特に10mm以下の小病変の検出が多く見られました。これは、AI支援内視鏡がより早期段階で胃がんを発見していることを示唆しています。 加えて、検査時間はAI群7.22分・非AI群7.37分とAI導入によりむしろわずかに短縮しており、AIの導入が検査の負担増につながらないことも確認されました。
■今後の展望
今後は、本知見をもとに、AI支援内視鏡の住民検診や職域検診への展開、術者経験を補完する教育ツールとしての活用、さらには食道がんなど他のがん種に対する有効性検証へとつなげることで、上部消化管がんのより早期かつ確実な発見と、患者さんの予後改善に貢献していく予定です。
■用語解説
注1)リアルワールドデータ:病院や健診施設などで日常診療を通じて集められる医療データのこと。臨床試験のように厳密に選ばれた集団ではなく、実際の医療現場で得られた多様な患者・受診者のデータを含むため、より現実の医療を反映した解析が可能となる。
注2)AI支援システム:人工知能(AI)を用いて内視鏡画像をリアルタイムに解析し、がんが疑われる領域を画面上に表示して内視鏡医の診断を支援するシステム。本研究で用いたシステムは、胃の腫瘍性病変や食道扁平上皮癌の疑い領域を表示する機能と、観察すべき胃の主要部位の撮影状況を自動確認する機能を備えています。
注3)陽性的中率:検査で「異常あり(陽性)」と判定された人のうち、実際にその病気である人の割合。本研究では、生体検査(組織検査)を行った症例のうち実際にがんと診断された割合を指し、値が高いほど不要な生体検査が少なく、診断につながる生体検査が多く行われていることを意味する。
注4)傾向スコアマッチング法:観察データにて、一定の項目をそろえて対象者を抽出することで、対象群に対する介入群(調査対象)の効果を公平に見る方法。本研究では介入群をAI群、対象群を非AI群として年齢・性別・喫煙・飲酒・ピロリ菌感染歴・内視鏡医経験年数・前年内視鏡受診歴をそろえて調査した。
■論文情報
タイトル:Impact of Artificial Intelligence-Assisted Endoscopy on Screening for Upper Gastrointestinal Cancer in a Large-Scale Health Screening Facility
著者:Chihiro Goto, Ryo Nakagawa, Ryosuke Horio, Akane Kurosugi, Tatsuya Kaneko, Tsubasa Ishikawa, Yuki Ohta, Takashi Taida, Kenichiro Okimoto, Tomoaki Matsumura, Jun Kato
雑誌名:Digestive Endoscopy
DOI:10.1111/den.70159
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