異文化踏まえた環境急務 個人店舗は対応難しく 増加する訪日客 【聖火の宿題 ちば 五輪・パラまで2年】(5)

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ハラールフードを楽しむイスラム教徒=成田空港第2ターミナルのラ・トック
ハラールフードを楽しむイスラム教徒=成田空港第2ターミナルのラ・トック

 東京五輪・パラリンピックを前に、増加を続ける訪日外国人。競技開催地で、成田空港もある千葉県には期間中も多様な文化や習慣を持つ旅行客が訪れることが見込まれる。掲示板の多言語表記など言葉の壁への対応はもちろん、イスラム教徒が戒律に従った食事を取れる「ハラール認証」レストランの普及など、宗教や文化の違いを踏まえた環境整備が急務だ。

 多くの外国人でにぎわうお盆時期の成田空港。第2ターミナル内の飲食店「ラ・トック」の店頭には「ハラールキッチン」と英語で表示され、昼すぎには多くのイスラム教徒が詰め掛けていた。「全部ハラール?」と真剣な表情で店員に確認。彼らにとって重要な問題だと分かる。仕事で来日したパキスタン人の自営業、ショーへール・アスラムさん(46)は「昔は食べられる店があるか心配だった。もっとこうしたお店ができてほしい」と笑顔で食事を楽しんだ。

 空港内にはハラール認証を受けた飲食店がほかに2店舗営業。第1~3の各ターミナルには礼拝室もある。大半の飲食店のメニュー表にはピクトグラム(絵文字)で使用食材が表記され、イスラム圏以外の外国人利用者にも判別が容易。「文字を読み取れなくても、食材が分かって安心」と好評だ。

 五輪・パラ7競技会場の幕張メッセがあり、周辺にホテルも多い千葉市。昨年の延べ宿泊者数(推計)はマレーシア人が前年比2・65倍の2万4460人、インドネシア人が1・5倍で1442人。両国をはじめ東南アジアにも多いイスラム教徒の訪日客が増えている。戒律にのっとった食事を提供する店・ホテルを紹介するマップを作った同市は、外国人客の使い勝手を考え、隣接する市原市、四街道市の店も追加。観光案内所や成田空港、海外の旅行博覧会で配布している。

 成田空港や千葉市の取り組みは県内の外国人対応のモデルとなりそうだ。

 一方で、個人経営などの小規模店舗では、対応が容易ではない。成田市に隣接する富里市の飲食店の経営者男性(35)は「外国人のお客さんのために、Wi-Fi(無料公衆無線LAN)を設置したり、英語表記のメニューを用意しているが、英語が通じない人も多い。翻訳機などに補助金が出れば助かる」と現状を明かす。調理に包丁を使い分けるといった手間を考えると、ハラール対応には尻込み。店内に食事を持ち込んでしまうなどマナーの違いに悩む同業者も多い。

     ◇ 

 浦安市の明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部の内苑孝美学部長(59)は「宗教的な意識が希薄な日本人は、ハラールへの認識を高めていくことが必要。こうした一つ一つの点が結ばれて、大きなおもてなしになる」と指摘。「個人店舗が外国人を受け入れやすくするためには、自治体や観光協会が多言語対応や異文化理解のマニュアルを配ったり相談窓口を設けるなど、フォローすることが効果的だ」と話した。

◇県内での外国人旅行客の伸びと対応 成田国際空港会社によると、今年上半期の国際線の外国人利用者は約869万人で、前年同期比13%増。県によると、県内への宿泊客も増えており、昨年の延べ宿泊者は約368万人で前年比9・9%伸びた。県はトイレの洋式化や掲示板の多言語表記、Wi-Fiの整備を市町村や商工団体、宿泊事業者への補助を通じて進めている。