房総×アートの化学反応 昭和な駅から見る「宇宙」 いちはらアート×ミックス会場リポート(上)

駅のベンチに腰掛ける宇宙飛行士のオブジェ
駅のベンチに腰掛ける宇宙飛行士のオブジェ
西野達「上総久保駅ホテル」
西野達「上総久保駅ホテル」
マー・リャン「移動写真館」
マー・リャン「移動写真館」

 市原市内で11月19日から12月26日までの約5週間にわたって繰り広げられている国際芸術祭「いちはらアート×ミックス2020+」(同実行委員会主催)。多彩な現代アート作品が溶け込んだ房総の里山は、普段とは全く異なる不可思議な光景に様変わりし、来場者を想像の世界へといざなっている。会場を巡り、「房総×アート」の化学反応を体感してみた。

(平口亜土)

 市内の田園風景の中を走る地域のシンボル、小湊鐵道は、昭和の風情を残す駅舎のたたずまいも印象的。同芸術祭では、それらの市内全17駅に作品を展示する「駅舎プロジェクト」を展開。目玉企画の一つだ。

 電車に乗って五井駅を出発し、次の上総村上駅のホームにさしかかると、ベンチに腰を下ろした宇宙飛行士のオブジェが目に飛び込んできた。異様な光景なのだが、不思議と周囲の風景になじんでいるようにも見える。

 これは、レオニート・チシコフの連作で、7駅に宇宙をテーマにした作品を配した。民間人の宇宙旅行が話題になるなど、急拡大の兆しを見せる宇宙開発。「地方と宇宙は早々に身近になる」という予言のようにも感じられる。

 上総久保駅には、駅舎と一体化したホテルがあった。西野達が手掛けた作品で、「市原の景色はとても良いのに、泊まるところが養老渓谷ぐらいしかない。それなら、ホテルを作ってしまおう」と考えたという。ダブルベッドを備えた部屋から間近に望む電車と里山の風景は、非日常そのものである。

 上総牛久駅を降りると、昭和の風情を残す商店街の中に、昔懐かしい紙芝居屋のような趣のマー・リャン「移動写真館」、世界の名画の模写で埋め尽くされた豊福亮の「牛久名画座」などの展示が溶け込む。昭和と現代アートのコラボが楽しい。

 市内をバスで南下し、旧里見小学校に到着。ここではEAT&ART TAROによる「おかしのはなし」が楽しめる。県内各地の土産菓子に付く「しおり」に書かれた地域の歴史を紹介するパフォーマンス。ガイドには載っていない「コア」な歴史も知ることができるかもしれない。

 同校の体育館では、コロナ禍で作品発表の機会を失った世界の芸術家たち約200組が、それぞれの思いを語った映像を次々に上映するインスタレーションを展示。創作活動に精を出すなど、コロナ禍でも総じてポジティブな芸術家が多いことが印象に残った。

  •    ▶▶▶「下」に続く
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