陽性者の症状を注視 開業医が見た新型コロナ感染症の特徴 304人の解析から 稲毛サティクリニック理事長・河内文雄 【医療現場からコロナ禍の羅針盤 情報提供とアドバイス】(3)

 わが国で初めて新型コロナの感染者が確認されたのは2020年1月15日でした。その後2月13日には国内で初めての死者が認められ、一気に不安はヒートアップして行きました。熱や咳で多くの患者が医療機関を受診しましたが、患者を診察した医者の判断で、自由に新型コロナの検査が出来るようになったのは20年8月からなので、症状などの集計はそれ以後のものとなります。

 ウイルスの遺伝情報を増幅して調べるPCR検査は、結果が出るまで2日かかりますので、当院では、ウイルスに感染した細胞から沁みだすタンパク質の有無を調べる抗原検査を主に用いました。こちらは咽頭ぬぐい液を測定キットに垂らすと、陰性であればcontrol line(Cライン)のみが現れ、陽性の場合はその隣にもう1本threshold line(Tライン)が最長でも15分以内に現れます。

 感染拡大の当初は武漢由来の従来株が主体で、陽性の場合のTラインは数分かかって徐々に出現しましたが、20年11月ごろから、秒単位の短さでくっきりとした陽性線の現れるケースが出始め、12月以降、そのような反応を示す陽性者はどんどん増えて行きました。当時はまだサブタイプの解析は行われていませんでしたが、後の解析でその頃にアルファ株に変換していたことが判明しました。

 似たようなことは感染力の強いデルタ株に移行した時にも起こりましたが、6月ごろにはもう既に検査会社からPCR陽性者がどの株に感染しているか報告がありましたので、しかるべき備えをすることができました。

 20年8月から21年8月までの間に当院の発熱外来を受診した患者のうち4469人に抗原検査を行い、304人が陽性でした。

 図に陽性者の症状をまとめてありますが、時期の違いによる症状の出現頻度には差が認められず、発熱、咳、倦怠感、頭痛、咽頭痛という、通常の上気道炎でも認められる症状が上位を占めています。

 また、特徴的な症状と言われる味覚や嗅覚の異常は、いずれの時期においても出現頻度が乏しく、味覚嗅覚異常が無いからといって新型コロナウイルス感染症ではないとは、けっして言えないと思われました。

 しかし、症状による解析が無駄かというとそんなことは無く、たとえばデルタ株では、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛などの腹部症状の出現頻度自体は他の株と差が無くとも、症状は激烈なケースがほとんどで、明らかに質的な違いが出ていました。同様に、デルタ株では従来株やアルファ株よりも高熱が続く傾向があり、とくに重症化するケースでは、40度ほどの高熱が1週間以上続きました。

 さらに特筆すべきは、抗原検査陽性の304人と陰性の4165人の比較で、明確な症状としてはカウントされない部分で、明らかな「差異」が存在したということです。陽性者の多くは、検査前から「何かいつもと違う」と訴えていました。それが具体的にどのようなものか尋ねても、いずれの方からも明確な答えは得られませんでした。もしも皆さまがこれから「何かいつもと違う」感覚に襲われるようなことがありましたら、速やかに検査を受けられたほうが良いと思います。


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