最後の砦守るために 開業医から見たコロナ禍の現状 稲毛サティクリニック理事長・河内文雄 【医療現場から コロナ化の羅針盤 情報提供とアドバイス】(2)

 町医者の使命は、最重要ミッションをこなしながら、同時に、新型コロナウイルス感染症の最後の砦(とりで)である病院を守るためのゲートキーパーになることです。

 情報も装備も乏しい最前線で、いや応なく新型コロナウイルス感染症と対峙(たいじ)しなければならないわれわれの仕事は、日々「見切り」の連続です。例えば、新型コロナウイルスの直径はおよそ100nm(ナノメートル)で、これはインフルエンザウイルスとほぼ同じなので、数千個レベルのウイルスが体内に侵入しなければ発病しないだろうと「見切り」、感染当初から発熱外来を続けています。

 当然ながら何も対応しなかったわけではなく、院内感染に対してのポイントは、隔離と滅菌と換気と早くから「見切り」、それを具体的な形にするために、「隔離スペースの改装・深紫外線滅菌機器の購入・間断の無い持続換気の実施」を行いました。

 その結果、9月30日までに346人の陽性者とごく近い距離で接していながら、当院のスタッフは誰ひとり新型コロナに罹患(りかん)しておりません。

 また、有効な治療薬が開発されていない時点で、われわれが関わることのできる根本治療は、唯一ワクチン接種のみであると「見切り」、千葉市の接種開始日(5月12日)から積極的に個別接種を行ってきました。

 さらに当院では、ワクチン接種の予診に時間をかける必要はないと判断し、それを極限まで簡略化することにより、1時間で200人以上の高速接種を実施しています。当院で接種を見合わせたのは、アナフィラキシーショックの入院歴のある数人だけで、希望者のほぼ100%に接種しています。

 表に示したように、9月30日までに2万1810回の接種を行いましたが、待機時間中に数名が迷走神経反射で気分不良を訴えたのみで、二次待機病院に搬送したケースはありませんでした。迷走神経反射は横になっているだけで数分以内に回復しました。

 ちなみに当院では、貴重なワクチンを無駄にしないため、キャンセルが出た際には「現場の裁量権」で希望者に余ったワクチンを打ち、今日に至るまで1本も廃棄を出していません。これはマネジメントを一手に引き受けているスタッフの努力の成果です。

 第5波では短期間で患者数が急増し、自宅療養中に状態の悪化した患者さんの受診が相次ぎました。陽性確定者の外来診察はルール違反と言いますが、具合の悪い時に来院してもらわなければレントゲンを撮れませんし、毎日コンスタントに陽性者が出ている時に、そっちの陽性者は受診しても良いが、あっちの陽性者は駄目!というのは理屈に合いません。これもまた、おかしなルールはいずれ撤廃されるだろうと「見切って」のフライングです。

 ところで最初に述べた、われわれの最重要ミッションは何でしょうか? それはもちろん「一般診療」です。2020年のわが国の死亡者数は138万4544人で、1日当たり3800人ほどの方が亡くなっています。コロナだけに目を向けるわけにはいかない理由がお分かりでしょうか。

 最後にひと言、真実がその姿を現すのはただ一つ、事実の延長線上だけです。どうぞ皆さま、事実を見抜く目をお持ちいただけますように。


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