

映画やテレビドラマのロケ地を観光誘致に活用し、地域活性化につなげる「ロケツーリズム」。映画「海賊とよばれた男」(2016年)の撮影地である勝浦市や、同じく「万引き家族」(18年)のいすみ市など、千葉県内でも多くの自治体が力を入れている取り組みの一つである。中でも近年積極的な活動を続けている茂原市は、20年度の「ロケツーリズムアワード」の地域大賞に輝いた。ロケ誘致を通じて地域の魅力発信を行う同市の取り組みを取材した。(溝口文)
◆優れた連携体制
18年10月に発足した「千葉もばらロケーションサービス」。季節ごとのイベント以外に「年間を通して観光客を呼び込めるコンテンツを作りたい」ということから活動が始まった。同サービスは官民一体の組織で、市をはじめ商工会議所や警察、市議会、旅館組合などで構成。市が一丸となり、スムーズに誘致を行う仕組みを確立した。始動から約2年半で撮影実績は100件超。設立以来毎日のように問い合わせがあり、その数は計700件以上となる。ロケツーリズム協議会の藤崎慎一会長は「体制が全国的に上位のレベル。ロケ誘致からシティープロモーションを、一気通貫で、迅速に行えるようにしている」と、優れた連携体制が実績に表れていると評価する。
◆パネル展開催
映画「青くて痛くて脆い」(20年)やNHKドラマ「ここは今から倫理です。」など、数々の話題作のロケ地となっている。昨年、ワルシャワ国際映画祭で邦画初の最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)を受賞した「浅田家!」では、長生病院と榎町商店街で撮影が行われた。作品公開時には同じく市内で撮影が行われた映画「罪の声」と合わせ、ロケシーンパネル展を開催。撮影風景や劇中シーンを紹介し、会場では市内のロケ地マップも配布した。同作以外にも作品関連イベントを開催し、観光客の呼び込みに尽力した結果、20年度の直接経済効果は2月末時点で約1千万、広告換算効果は約71億円に上った。
◆実動部隊結成
また、昨年2月には同サービスをサポートする「もばロケ☆ネギらい隊」を結成。ケーキ店や居酒屋などの飲食店関係者や、ホテル関係者、市障害福祉課職員など多彩なメンバーがそろう。ロケの受け入れのほか、イベント開催や運営、撮影現場への差し入れからエキストラ協力など、実動部隊として活躍。ご当地グルメの開発にも注力し、ロケ地と食を結び付けての魅力発信も視野に活動を続けている。
◆ロケの聖地に
「茂原のファンを増やしたい」。ロケ誘致を通じて市をPRし、交流人口を増加させ、将来的には移住してもらうことが目標だ。昨年10月には、同市など全国4市町が連携し撮影協力をする映画「今はちょっと、ついてないだけ」の製作も決定し、今後ますますの知名度向上が期待される。今年に入ってからも既にバラエティーやドラマの撮影が行われており、順調な滑り出しを見せている。茂原が“ロケの聖地”として注目される日はそう遠くないだろう。