本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「寄り添う」 やしまたろう「からすたろう」

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 小学三年から五年まで、甕(もたい)先生に受け持っていただいた。先生は降っても照っても長靴を履いて、自転車で学校に来た。

 言葉使いに厳しかったが「えべや(行こうか)」「そうだじ(そうだよ)」と、時折、飛び出す松本弁に温もりがあった。アンデルセンなどの長い物語を、昼休みに少しずつ読んでくれた。

 印象に残っているのは、「はだか虫」を飼ったこと。通学路にクヌギ林があり、その木には毎年虫がついた。毛がないから、私たちははだか虫と呼んでいたが、コシロシタバという夜蛾の幼虫だ。虫は葉っぱにびっしりと付き、時折、通学路の真上で空中ブランコをした。気持ち悪くて、みんな、ビクビクしながら登校した。

 「はだか虫の観察をしよう」と言い出したのは先生だった。花瓶にクヌギの枝を挿し、そこで虫を飼った。最初は恐る恐るだったが、スケッチをしたり、クヌギの葉の交換をするうちに、はだか虫への偏見は消えていった。それどころか、葉っぱから逃げて床を這っている虫を、平気でつまめるようにもなった。

 クヌギの葉っぱがつやつやと光り始めると、はだか虫の飼育を懐かしく思い出す。恐れも偏見もなく、今でも毛虫をつまめるのは、先生のおかげかもしれない。

 五年生で畑を作った時、養豚をしているクラスの男の子の家から堆肥をどっさりもらってきた。「汚い」「くさい」を連発する私たちに、先生は言った。

 「堆肥は汚くない。自然が作ったものに汚いものはない。農家の人はこれを手でまくんだよ」先生は、堆肥を手づかみにして畝に入れていった。私たちも真似をした。堆肥はほかほかして、くさいどころかしだいにいい匂いにさえ思えてきた。畑には大きなジャガイモが実り、私たちはその芋で、でんぷんの実験をした。もちろん、ゆでて食べもした。...

  【メモ】「からすたろう」やしまたろう(文・絵)・偕成社

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