「山下清画伯」展

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 県立美術館は混み合っていた。特別展のためだ。特徴として、参集者の表情がバラエティーに富んでいるようだった。美術愛好家の眼識の後ろにはファミリーが付き、この貼絵の蝶々、さとし君が作ったのとおんなじだぁ、といって握った孫の手を上に上げ、娘(母親)と顔を見合わせてはしゃぐ祖母。

 山下清展ということで、その分の親近感もあるのだろうが、孫が貼絵上手といっても、なかなか天才とは一緒にならない。

 山下清展に寄せる「貼絵との出会い」から、一文を引用させてもらう。

 -しかし清は、言語障害はあるものの驚異的な記憶力の持ち主であり、トランプの神経衰弱では誰よりも明確な記憶力を発揮している。(後略)

 清の天性的ともいうべき記憶力は、絵を描(か)く上でも、大きな持ち味になったという。つまり五感を通して得た記憶が緻密に描出され、ただ体裁(ていさい)的に整えられた作品とは、見詰めていく先にハートの違いが出るようだ。

 閉鎖的だった清の心が、ちぎり絵・貼絵による自信から開かれ、作品に多くの人物像が登場するようになり、力作『剣道』『身体検査』『雪だるま』『上野の地下鉄』『上野の東照宮』等を経て、代表作『長岡の花火』へと行き着く。......