民話に里帰りする

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 ケーブルテレビの「市原郷土民話ドラマ」を書くべく、資料の「市原市史」を繰(く)っていると、何かにつけて村同士の争論が記述されていて、たいていのケースで我欲がからんでいる。

 ただその我欲は、軽蔑や非難の対象というより、利己のエネルギーに振り回され、右往左往する様子が、時としてかわいらしく、ほほえましくもある。

 ただそれは、時代を離れた第三者的感想で、元禄期の成り行きでは、血を見る状況もあったようだ。

 当時の法の裁きもおもしろい。川在(かわざい)村と大桶(おおけ)村で「地境出入」があった。つまり境界線をめぐる出入(でいり=けんか)である。

 素因は台風によるが、洪水で川が氾濫し、蛇行する川の流れも変わり、両岸の表情も変容する。土堤を削り取られた村側、削られた土砂を川の流れでそっくりもらい、土地面積を拡大した村側、必然として「出入」が準備されるが、その前に一応の法の裁きもあった。

 勘定奉行(稲生伊賀守正照)は裁定する。

 「洪水により、川在村は岸辺の土地を削り取られ損をした。一方の大桶村は、削り取られた川在村の土砂が自村の岸辺にくっついて土地面積が広がり、棚ぼたで得をした。そこで川在村は、広がった分の土地は本来川在村の所有だから返せ、さもなくば代金を支払えと、まず、このような主旨の訴えであるな。では裁定を下す。

 裁定=『川は流れ付きの大法』により、川在村の訴えを却下する。即ち『川は流れ付き』ということは、川のせいである村の土地が減り、他方の村の土地が増えても、減った村は、増えた村から土地を取り戻せない。それが、自然の法則にのっとった大法である。ただし、人為的に川の流路を変えた場合はその限りではない。納得がいったか」

 と言われても納得がいくはずはない。東日本大震災での区画整備には、この種の『流れ付きの大法』は持ち出さないでほしい。・・・