2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

山梨の深沢幸雄展

 山梨県立美術館の第一駐車場は満杯だった。これも深沢幸雄先生の人気の故と思えばうれしく、勇んで第二駐車場の方へ回った。

  空きがあり、駐車して車外に出ると、数人の人たちの目が、こちらの車を注視している。私は気付かなかったが、私らが乗ってきた車はベンツだという。

  笛吹川べりを飛ばしながら、やはり後ろが重いかな、というつぶやきが運転席に洩れていたようだが、五人の詰め込み乗車は、ベンツには似合わなかったらしい。ベンツ君ごめんよ。そして千葉からごくろうさま。

  人々に憧憬視される高級車で、高級な展覧会を見にこられたことが、私の心まで高級感で満たしてくれた。

  美術館の森の紅葉はくすみなく明朗で、曇天の照明となり、前庭の深沢幸雄展―いのちの根源を謳う―主催 山梨県立美術館 山梨日日新聞・山梨放送と記された横長の掲示板を彩る。

  五人はたたずみ、やがて本館に向かう。

  玄関前には展覧会のメーン掲示があり、感動を胸に、眼前に広がる石段をゆっくりと上がる。私にとってはかなりの段数に思えたが、それはうれしさの実感でもあった。

  二人掛けの受付で気持ちのよい応待を受ける。深沢先生から贈られたチケットを、先生の署名入りの封筒から取り出して手渡すと、ちらっと、地元出身の大画家の尊名を認めたものか、受付嬢の笑顔がいっそう好意的になった。

 同行の友らは、それぞれ千円のチケットを買うと言ったが、深沢先生のお気持ちだからということで、ご招待のチケット五枚、ありがたく使わせていただいた。チケットのことだが、前以て先生から贈られていたが、つい私が、チケットを未使用のまま保存しておきたい、と言ったのを聞き付けた先生が、山梨行きの前日に、また追加のチケットをメール便で届けて下さった。記念用にもどうぞ、といったメッセージ付きで。うれしかった。

 展覧会の場内に入るとすぐに、初期の名作『めし』(一九五六年)=写真=が迎えてくれた。私はこの銅版画作品『めし』が好きでたまらなかった。

 深沢先生の温情で、私のエッセー集『オレ、たそがれ』の口絵にも『めし』をお借りした。

 さらに会場の中央部には、本の表紙を飾ってくれた『黄昏銀座』が展覧されていた。私は感激で胸が痛くなり、本の購読者である友らも、感慨深げにうなづいていた。...


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