2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

高齢を悟らされる

 掛かり付けのお医者さんから、あなたは高齢だから、高齢だから、と何べんも言われている。

 私は自分の老いに気付かず歩いていたが、お医者さんから「高齢」を繰り返されるうち、なんとなく自分の「高齢」が見えてきて、不安になった。歩いていてよろめくようにもなった。

 お医者さんにすれば、あなたは高齢だから、むちゃな加療はできない、というほどの意味だったようだが、ひがみ根性の私には、高齢だから先が無い、というニュアンスで聞こえた。

 身震いが出た。これまで自分の高齢を意識することはなかった。死を見つめることもなく、チャラチャラと生きてきた。それだけに医師の言葉から死を仮想したとき、愕然とした。

 生ある者は死あり、と言われても、私には天命を受容する悟性も宗教性もない。

 長生郡長生村本郷在住の早瀬岳氏から贈られた詩集『命あるものよ』(東京文芸館)から、一編の詩を読む。

  解体される高松塚

  雪ふる狭き飛鳥の天地のその奥に
  雪に覆はれた幾つもの小さな丘のうねりに囲まれて
  そこがすでに陵であることさへ忘れてしまった高松塚がある

  石の室の四囲に描かれた千年前の群像が
  室を開けてわづか四十年にして守る能はず
  カビに侵されその色は失はれ剥がれ落ちかかる
  かくして人々は石の室を覆ふ土を取り除き
  ここに葬られし人の長き眠りを守り通した石の室そのものを
  再びはカビなどの微生物に侵されぬやう
  自らの管理の掌中に所を変へて移すことにした(二〇〇六年)
  つまり千年かけてほろびの川を下ってきたものが
  人の手を加へたばかりに
  余りにそのほろびの速さが進んだことに怖れをなして
  再び後の千年までその姿を送らうと決意したのだ

  人知を尽くしても川の流れは止められない
  今はそれを緩やかなものに変へる程の科学しかない
  けれどもそれを歎かうとは思はぬ
  この宇宙の一隅に存在してゐるものすべて
  ほろびぬものはないのだから
  ほろびぬやうに見えるものでもその速度が遅いだけ...


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