気が済むまで描く

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 藤田和子さんは声もお顔もかわいい。会うたびに、(努力しないで)笑顔がパッと輝く。

 Qiball2F「画廊ジュライ」に入ると、ギャラリー全体が輝いて見えた。濃紺をベースとした作品ぞろいなのに、なぜ室内が明るいのだろう。紺を基調とした絵柄のすべてに「燭光」が内蔵されているせいか。そしてメーンテーマが「夜明け」のゆえか。

 「ちょっとこちらへ」

 と藤田さんから声が掛かり、いっしょに廊下へ出て、大きな窓ガラスごしに内部を見る。

 藤田さんの指の先に、かなりの号数の作品が掛かっていて、黒と紺の画面上部に秘されるように、光明の兆しが見え隠れする。その鼓動が、窓ガラスごしに、より明確な律動音を伝える。

 室内に入り、その絵の前に立つと、表題として一文字『輝』とある。ああ、今回のテーマが「夜明けの輝き」であり、それで展示室が輝いていたのか、と納得された。

 「今回の作品は、見る距離に味方されているみたいです」

 藤田さん弁だが、なるほど、窓ガラスごしに見た絵は綿密で、眼前の絵にはタッチの荒さがあったが、それはそのまま明け行く生命の躍動を象徴していた。

 藤田和子「画廊ジュライ」展に、仮にタイトルを付けるとすれば、「夜明け前」になる。

 作品『夜明け前』(一)は、入り口左方に展示されていた。横長の画布に黒雲が湧き立ち、わずかに間隙の「白」が夜明けをイメージするのか。あるいは黒雲そのものに夜明け前の告知があるのか。

 藤田さんは他の介護に疲れ、自身も病魔に魅入られ、そこから「夜明け前」への希求が高まったようだ。

 作品『夜明け前』(二)は案内状にも使用され、正に黎明を感得させる。見た瞬間に美しい。心に開く夜明け、島崎藤村も納得する傑作だ。

 連なって『大地』がある。草木が伸び、花々が咲き、前方が無限に明けていく。

 今回はシュルレアリスム展のようだが、何かしらレアリスムとの接点が看取できる。...