明治、大正期の日本アルプス開拓、戦後のマナスルやエベレスト北壁の初登頂など、日本の登山界をリードし、国の内外で輝かしい業績を挙げてきた日本山岳会(略称JAC・尾上昇会長)が、「山の日」制定に向けて本格始動した。アピールで「わが国の文化は『山の文化』と『海の文化』の融合によってその根幹が形成されてきた」とし、国民祝日としての「山の日」の制定を提案している。
「山の日」については、本紙が昨年10月20日付と、ことし1月26日付の社説で、自然保護やエコツーリズム促進の立場から千葉県での「山の日」の制定を呼びかけた。
千葉の山といっても、地学的には「山地」ではなく「丘陵」に分類される。最高峰の嶺岡山系愛宕山でさえ403メートル。県内に高さを誇る山はないが、黒潮と親潮の合流によって南方系と北方系の動植物が出会うという多様な生物相が見られることは千葉の山の誇りだ。
さらに、人と自然が調和・共存し、自立し循環する世界にも類例ないまれな豊かな自然の恵みによって農林漁業における人や自然、文化のまとまりは「持続可能な生態系のモデル」といわれ、江戸時代の文人画家、谷文晁が、現代のガイドブックのような版画集『日本名山図会』で鹿野山や鋸山を紹介していることからも、その素晴らしさが再発見できる。
しかし、都市の拡大や埋め立て、開発、さらには農林漁業の変ぼうなどで自然環境は悪化。生物多様性も急速に低下しているのも事実。そんな中で県は2003年5月、「多様な生き物の宝庫の里山を保全する」として全国で初めて「里山条例」を施行したことは、まだ記憶に新しい。
有名な尾瀬が電源開発の候補地とされたとき、水没の危機から救ったのは日本山岳会であり日本自然保護協会だった。地球環境に対する考え方も一変。官も民も環境を無視した開発行為は論外という風潮になり、山も高さを極める場から多くの国民が楽しみを共有する場に変わりつつある今日、JACが提案する「山の日」の制定は歓迎すべきことだろう。
「山紫水明」という言葉がある。山と川のある風景を日本人は好み尊んできた。豊かな自然環境の創出に取り組むべきだ。