米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に打開の糸口が見えない。
北東アジアの有事に即応する軍事展開上の理由からキャンプシュワブ沿岸部(名護市)移設を譲らない米国。沖縄県民、連立与党の社民党は県外移設を求めている。先の日米首脳会談で「私を信じて」と現行案受け入れを示唆しながら、なお県外移設を模索する鳩山首相。政府間合意を履行するのか否か。選択肢は二つに一つだ。首相決断は先送りできない状況にある。
そもそも普天間移設問題は、騒音と航空機墜落の危険にさらされてきた飛行場周辺住民、沖縄の負担軽減が目的だったはず。このままでは移設とセットになっている在沖縄海兵隊の一部8千人のグアム移転と同飛行場を含めた米軍6施設の返還も仕切り直しとなりかねない。かねて「私が決める」と語ってきた首相が、曖あい昧まいな発言を繰り返すならば米国の態度を硬化させ、停止している日米協議の再開も遠のく。
温暖化対策、核軍縮、経済危機の対応、アフガニスタン復興など日米が連携して取り組むべき課題は多く、普天間問題で両国関係をこじらせることは避けなければならない。
米国がキャンプシュワブ沿岸部移設にこだわるのは普天間が海兵隊の基地であるためだ。海兵隊は輸送・攻撃ヘリが歩兵と連携して行動する、機動力が存在意義となっている。グアムに移転する8千人は主に司令部要員で、朝鮮半島、台湾海峡の有事に対応するため戦闘部隊は沖縄に残る。移設先には基地と訓練場を確保しなければならず、現行案だけが日本の防衛に必要な軍事力を維持できるというのが米国の主張だ。
「危機感を感じている」(岡田外相)、「日本の責任は重い」(北沢防衛相)。担当閣僚が日米交渉の現状をこれほど深刻に受け止めているのに対し、鳩山首相は「年内に政府方針を決めたい」と語り、早期決着の意志はなさそうだ。
首相は県外、あわよくば国外移設の腹づもりであろうが、あくまで日米合意の履行を迫る米国に、今さら時間稼ぎの変化球は通じまい。温暖化対策の国際会議でオバマ大統領との会談も「必要ない」と米側に拒否される始末。正念場どころか、崖っぷちの鳩山外交だ。