スキーのジャンプ混合団体で、日本は高梨沙羅(クラレ)が着用した競技スーツに規定違反があったと判定され、103メートルを飛んだ1回目の高得点が抹消されるペナルティーを科せられた。高梨だけでなく、日本とともに優勝を争うと予想されていたジャンプ強国のドイツ、オーストリア、ノルウェーの有力女子選手からも同じ違反が確認され、いずれもメダルを逃した。
これだけ多くの違反が五輪で摘発されるのは異例だし、とても残念だ。手に汗握る接戦を期待していたジャンプ競技のファン、特に選手の活躍を応援していた4カ国の国民の落胆と失望は大きかったに違いない。
▽公正な競技運営の責務
国際スキー連盟(FIS)が公正な競技を確立するため、違反が起きないよう、目を光らせるのは当然だ。厳格な規定を設け、それに違反する行為が確認されたなら、規則に基づいてペナルティーを科すのは、競技の運営責任を担う国際連盟として最も重要な活動の一つだろう。
それは分かる。今回、ふに落ちなかったのは、違反摘発が選手の競技直後、試合の途中に相次いでなされたことだ。
事前の点検を含む手続きを、より充実したものに改善し、競技中の違反確認を限りなくゼロに近づける努力に取り組めば、このように競技のイメージを大きく損ない、選手が傷つく事態は防げるのではないか。
ジャンプは速いスピードで助走路を飛び出し、滑空してから舞い降りるため、空中で浮力を得ることが鍵を握る。体にぴったりフィットしたスーツよりも、緩めで大きめのものを着用すると、小さなパラシュートを背負ったように浮力が増す効果を得られる。
もちろん、人間の身体的な技術を競う試合に、人工的なアドバンテージが入り込んではならない。だからこそ、スーツは事前に点検を受け、競技中も違反事例がないか、抜き打ちで確認がなされることになっている。
▽背景に競争の激化
競技運営責任者が事前に「適合」と判断したものが、競技直後の確認作業で「不適合」と判断される。なぜ、このような不自然なことが起きるのか。
考えられるのは「適合」とされてから競技が始まるまでの間に、チームスタッフもしくはチームを支援する競技ウエアのメーカー関係者によって「微調整」が行われるからだろう。
今回、摘発された日本を含む4チームはシーズン中、毎週のようにワールドカップで優勝争いを繰り広げている。その他のチームより、資金力と選手支援の人的資源に恵まれている。しのぎを削るライバルを出し抜き、一歩先に出る工夫を凝らす中で、決められた基準を超えるミス、あるいは、故意の違反が生まれるのではないか。
高梨は今回、スーツの太もも回りが規定より2センチ広かったという。日本チームからは、なるべく大きなスーツを着用できるように、試合前のトレーニングで筋肉を膨らませているが、1700メートル前後の標高の高さと強い寒さで、それがうまくできなかったとの声が聞かれた。
各国ともルールぎりぎりで戦っていて「そうしないと勝てない世界」なのだという。
▽疑念の芽を摘め
FISは自身による事前点検後には、チーム関係者がスーツに一切手を加えることができないよう、新たな手続きを確立しなければならないように思う。
点検済みであることを証明する札をスーツに取り付けたなら、それをチームに戻すのではなく、自身で管理し競技直前に直接、各選手に手渡すような方法も考えられるのではないか。
現行の手続きでは、チーム間の疑念を完全に取り払うことは難しい。「相手は自分たちを出し抜こうと巧妙な細工をしているようだ」との疑念が競技場に渦巻いているのなら、これは健全なスポーツの状況ではない。(共同通信・竹内浩)