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仮復旧、戻った笑顔 土砂崩れ発生の障害者施設 居場所確保へ地域超え連携 千葉市緑区【房総豪雨1年】

土のう袋が積まれ仮復旧工事が完了した崩落現場の状況を説明する大原施設長=千葉市緑区
土のう袋が積まれ仮復旧工事が完了した崩落現場の状況を説明する大原施設長=千葉市緑区
房総豪雨当日、県知的障害者福祉協会が一斉送信した被害状況を知らせるメール
房総豪雨当日、県知的障害者福祉協会が一斉送信した被害状況を知らせるメール

 昨秋の房総豪雨で被害を受けた千葉市緑区大木戸町の知的障害者施設「ガーデンセブン」。仮復旧が終わり、入所者らに笑顔が戻っている。施設同士の協力で一時避難先が円滑に見つかり、日常生活へのこだわりが強い入所者らのために職員たちが奔走した成果。今回は連携がうまくいったが、複数の施設が同時に大規模被災したらどうするのか―。福祉関係者たちの模索が始まっている。

(報道部・安西李姫)

 昨年10月25日正午ごろ、ガーデンセブン裏のコンクリート擁壁が高さ約15メートル、幅約30メートルにわたり崩れ落ちた。大量の土砂や泥水が窓ガラスを破り室内へ流れ込んだ。ガスや水道の管も土砂でつぶれ、居住棟は利用できなくなった。入所者は一時的に自宅に戻ったり現場から離れた棟で過ごしたりしたが、2週間が経過しても慣れた居住棟に戻るめどは立たなかった。

 ガーデンセブンは知的障害のある30代~60代の男女40人が生活。保護者の高齢化などにより、自宅で生活できない人がほとんどだった。同区内の別の施設から連絡を受けた県知的障害者福祉協会の千日清事務局長(62)は「他の施設で入所者を受け入れる体制を整えなければ」と、すぐに協会に加盟する県内約250施設へ被害状況を報告。支援を求めた。

 豪雨に先立つ房総半島台風(15号)の広域停電で、各施設は地域を越えて被災施設に物資などを提供。「お互いに助け合って乗り越えよう」との意識が高まっていたことが功を奏した。千日事務局長からの“SOS”に20施設が反応。受け入れの連絡が返ってきた。ガーデンセブンの大原淳一施設長(57)は「円滑に見つかり良かった」と感謝する。

 入所者は県内各地の避難先へ。職員たちも連日、足を運んだ。「入所者の多くは環境の変化に弱い」と大原施設長。知的障害者は特定の職員の前でしか落ち着いた様子を見せなかったり、毎日細かく決まった手順で生活することを求めたりとさまざま。食べ物はもちろん、使うコップや座るいす、手元に置くぬいぐるみの位置などにも強いこだわりがある。

 職員は投薬などの医療的支援だけではなく、入所者一人一人のこだわりやくせを避難先に丁寧に引き継いだ。施設回りも居住棟が仮復旧する6月下旬まで、約8カ月間続けた。大原施設長は「環境の変化でストレスを感じないよう、どんなに小さなことでもできる限り情報共有した」と説明する。

 同協会は昨年の一連の自然災害を受け、今年8月に「災害対策委員会」を設置した。知的障害者施設の情報を集約、発信する事務局が被災した場合に備え、県域ごとに拠点を整備し、行政との連携や地域ごとに被害情報を集めるシステムを構築していく方針だ。

 同協会を挙げて施設間の協力体制を充実させるのは、そうせざるを得ない背景もあるから。千日事務局長は「知的障害者の問題は内輪で解決しなければという意識が強い。障害の特性を理解されることは少なく、『避難所にも行きづらい』という現状を知ってほしい」と話した。

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 昨年10月25日の房総豪雨から間もなく1年。県内各地で浸水被害や土砂崩れが発生し、11人が犠牲になった災禍を振り返り、被災地の今を紹介する。


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