再入率46% 十代の闇深く 少年院で費やす青春 第3部 青少年の心と向き合う 【育て!ちばの若人】(16)

 八街少年院(八街市滝台)を上空から見ると、入り口をくちばしに見立て、まるで鳥が翼を広げたような設計になっている。十五万平方メートルの広大な敷地。街の喧騒(けんそう)からは遠く、高さ四メートル以上の金網フェンスの向こう側から、少年たちの声がもれ聞こえることもない。

  院内では私語厳禁だ。非行仲間をつくらないように出身地を伝え合うことも許されない。髪は丸刈りで入浴は週二回。多くの扉は法務官の鍵がなければ開かない。少年たちは自由が大きく制限された中で、青春時代の一部を反省と更生に費やす。

  同院は、関東・甲信越・静岡地域の犯罪傾向が比較的進んだ少年たちが収容される。取材を行った九月二十日時点では、十六―十九歳の少年六十六人が入院していた。

  収容期間は平均十一カ月。少年たちは段階的に寮を移り、新入時寮から中間期寮などを経て、最後の三カ月間は個室の「希望寮」で出院準備にあたる。

■期待と不安
 窃盗事件を起こしたという少年(18)が取材に応じた。出院間近で、髪は伸び始めている。

  少年は中学卒業後、職を転々としたが続かず、不良仲間と遊び回るようになった。二度目の逮捕で昨年十一月、同院に収容された。

 「朝寝て夜起きる生活で楽しかったけど、今思えば高校に行けばよかった」。院内で、生まれて初めて小説を読んだ。犯罪者の家族の苦悩を描いた作品に触れ、少年は「自分にあてはまるかな」と、衝突してばかりいた両親を思った。

 出院後は車の整備士を目指すつもりだ。「働いて、被害弁償してくれた親に金を返したい。仕事が続くかどうか…」。希望寮では、社会に戻ることへの期待と不安が複雑に交差する。

■「答え見えない」
  同院の少年の再入率は約46%(九月二十日現在)。十八年目の男性法務官(36)は「もう大丈夫」と自信を持って社会に送り出した少年が再び犯罪に手を染めるのを何度も見てきた。

  更生プログラムを考案する立場のこの法務官は「出院時に不安視していた子が更生することもある。答えは見えない」と苦心する。「被害者からすれば、院内で笑顔でいるだけで気に入らないだろう。かといって、厳しくするだけで再犯が防げるわけでもない」

 プログラムは木工や溶接などの職業訓練が中心だが、被害者あての想定で手紙を書き、その返事も自分で書く「ロールレタリング」を実施することもある。反省を口で言えても、被害者の立場で手紙を書こうとすると手が動かない少年もいる。法務官は試行錯誤しながら少年の心の闇を見つめ続けている。

 忘れられない手紙がある。『焼香をあげにいって被害者の親に殴られた。でも、頑張っています』。法務官は「やってしまったことは消えない。ただ、くじけないでほしい」。思いは届くだろうか。


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