対応件数、7年で5倍に 虐待からの救出 第3部 青少年の心と向き合う 【育て!ちばの若人】(14)

 市川児童相談所(市川市大和田)の所長室に男性職員が慌てた様子で駆け込んできた。「緊急会議を開きたいのですが」。

  親からの身体的虐待被害を訴える児童が相談所を直接訪ねて来ていた。所長以下六人が初期対応を検討。児童をこのまま隣接の「一時保護所」で預かる判断が下された。

  この日、二度目の緊急会議だった。本山芳男所長は「一日に何度もありますよ」と複雑な表情を浮かべた。

■福祉司1人で80件
 児童相談所では虐待通報がある度に会議を開き、初期対応を慎重に話し合う。誤報もあれば、視覚的に深刻さをとらえづらい心理的、性的虐待もあるからだ。

 昨年度、県内の六児童相談所の虐待対応件数は計千五百五十九件で、七年前の五倍超となった。対応する児童福祉司は約八十人のみ。県は人員増だけでなく今年度から茂原市に「東上総児童相談所」を新設するなど対応を急いでいるが、市川児相では児童福祉司一人が常時八十ケース前後を抱える過酷な労働環境が続いている。

 現場が直面しているのは慢性的な人手不足だけではない。「面接室で七時間近く、親から責められっぱなしのこともあった」と、ある児童相談所の男性職員(58)は振り返る。職権で引き離した児童を一時保護所から取り返そうとする親との対立も頻繁に起こる。

 男性職員は「一時保護すれば絶対に幸せと分かれば説得しやすいが、あいまいだと難しい」。結局、今回のケースでは児童を親元へ戻し、家庭訪問によるケアを続けている。

 一方、児童福祉司の訪問を受けて「いつか来ると思っていた」とうなだれる親も多いという。男性職員は虐待を繰り返す親の裏腹な言葉に、問題の根深さを垣間見る。

■見えないところで
 今年一月、松戸市で一時保護の判断の困難さが浮き彫りとなった事件が起きた。身体的虐待を受け続けていた女児=当時(2つ)=が死亡した。

  同市を管轄する柏児童相談所(柏市根戸)では昨年十二月十二日、女児の顔に内出血などを確認していた。母親と同居の男を呼ぶと女児がなついていたため、帰宅させて二日後から家庭訪問に入った。

 二度の家庭訪問はいずれも、男がいない時間帯を見計らった。主席児童福祉司(58)は「継父に不自然な様子がなかったため、母子関係と養育状況から様子を見た」と当時の判断経緯を明らかにした。しかし、見えないところで男による女児への暴行は続いていた。

 二度目の家庭訪問の五日後、女児は病院に搬送されそのまま死亡した。男は傷害致死容疑で逮捕され現在公判中だ。

 主席児童福祉司は「(継父の個別聴き取りを後回しにした)判断が誤っていたとは思わない。ただ今後は、偏見ではないが、対応した家庭の父親が継父だった場合、行動を注視せざるを得ない」。同事件は現在、県の「児童虐待死亡事例検証委員会」で対応に問題がなかったか検証中。年内に答申が出される。


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