修学旅行「中止」で波紋 「感染拡大なのに」「生徒のために」 まん防延長でキャンセル料 コロナ禍判断難しく 【ちば特 千葉日報特報部】

代替旅行の企画を告知する文書(一部を加工しています)
代替旅行の企画を告知する文書(一部を加工しています)
コロナ禍で中止が相次ぐ修学旅行。同校ではバス移動での代替旅行を予定していたが「まん延防止等重点措置」の延長に伴い中止となった(写真はイメージ)
コロナ禍で中止が相次ぐ修学旅行。同校ではバス移動での代替旅行を予定していたが「まん延防止等重点措置」の延長に伴い中止となった(写真はイメージ)

 千葉県北西部のとある公立高校が、昨秋中止となった修学旅行の代わりとして今年、県外へ2泊3日の旅行を企画した。これが「まん延防止等重点措置」の延長決定を受けて中止となり、キャンセル料が発生したことが双方向型調査報道「ちば特(千葉日報特報部)」の調査で分かった。情報提供者は「感染状況が悪化する中で旅行を企画するのはおかしい」と批判。一方、学校側は「生徒たちのために可能なら実施したかった」と説明する。今回の「ちば特」は、修学旅行を巡り難しい判断を迫られるコロナ禍の学校現場の状況を探った。(「ちば特」取材班 田村理)

 県外への代替旅行の計画は今年に入って企画され、3月に保護者説明会が開かれた。

 同校などによると、修学旅行は当初、昨年10月に計画され、2泊3日で関西方面に行くことになっていた。参加予定だった同校3年生を対象に、今年5月に貸切バスを使い、2泊3日で神奈川県や山梨県に向かう行程に変更された。

◆「姿勢に疑問」

 新たな旅行計画について知らせてくれた保護者は、まだ実施予定だった今月上旬、「この状況下で旅行を実施しようとしている学校側の姿勢に疑問を感じる」と不安を口にした。

 一方、学校側は「距離を保って黙食するなど、ガイドラインに沿って、感染防止対策を徹底して実施する予定」と説明していた。

 同校の位置する地域は今春、まん延防止等重点措置の区域の一つとなった。感染者数が減らない中、学校側は延長決定まで「中止」の判断をしなかった。

◆直前に中止

 中止が決まったのは今月8日ごろ。直前の決定となったため、旅行代金の5%相当だったキャンセル料が20%まで増加。保護者は生徒1人当たり9千円以上負担することになったという。同校は中止の判断時期について「生徒のことを考えると、可能な限り実施したかった」とした一方、「連休に重なる部分もあり、判断が遅れたことは否めない」と打ち明けた。

◆保護者から要望

 実は、同校では昨秋、修学旅行の代替として既に県南部への日帰り旅行を実施していた。なぜ今春、新たな旅行が計画されたのか。

 同校は「生徒たちの思いを考え、行かせてあげたかった」と説明した。感染状況が落ち着いた時期に、近隣では修学旅行を実施した高校もあった。保護者らからは「なぜ、うちの高校では修学旅行が実施されないのか」といった不満の声も上がっていたという。

◆ほかの学校も

 代替旅行の中止は同校だけではない。県教委によると、本年度当初の段階で県立学校13校が宿泊を伴う代替旅行を予定していたが、4月下旬までに2校が中止を判断したという。

 県教委は4月19日、各県立学校長に向けてまん延防止等重点措置を受け対応を求める文書を通知。この中で、適用期間中は県外での旅行などを行わないよう求めていた。同校はこの通知などに基づき、中止を判断したという。県教委の担当者は「各校には通知に基づき、適切に感染対策をしてもらいたい」とした。

 日常と違う生活の中で、見聞を広げる修学旅行の意義は論を待たない。一方、修学旅行に限らず、コロナ禍で各学校は校内行事の開催に関して難しい判断を迫られている。子どもたちの笑顔のためにも、早期収束を願ってやまない。


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