2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

日常の裏に潜むホラー ヒメハルゼミ電話ボックス 【千葉まちなかアート】

巨大なヒメハルゼミのオブジェがしがみついた公衆電話ボックス=茂原市八千代
巨大なヒメハルゼミのオブジェがしがみついた公衆電話ボックス=茂原市八千代
電話ボックスの中。ガラス越しにセミのリアルな腹部が見える
電話ボックスの中。ガラス越しにセミのリアルな腹部が見える

 「美」をもってそこを訪れた人たちの心に潤いを与える、というだけが公共アートの役割ではない。平凡な風景を非日常化し、我々を「ここではないどこか」へと誘う重要な力も持つ。

 茂原市八千代のNTT東日本茂原ビル脇に見つけた電話ボックスは、後者の力を持つアートに分類できるだろう。外側にしがみつく巨大なセミのオブジェ。受け手が感じ取るべきは、昆虫の生態への興味か、はたまた、ホラーは日常の裏側にこそ潜みうる、というある種の真理か―。

 旧NTT茂原支店が1992年7月、「ヒメハルゼミ」を模して制作。茂原の八幡山はヒメハルゼミが生息する北限で、発生地として国の天然記念物に指定されており、それを広く周知しようと作られたらしい。ステンレス製で、実物の約70倍の大きさ。全長は、高さ2メートル強の電話ボックスと同じぐらいある。実際のヒメハルゼミは全長30~40ミリと小さく、高い木の上で過ごすため、見たことがない地元の人も多い。

 電話も普通に使える。ただ、セミのリアルな腹部が目の前に迫る状況下、平常心を保ちながら通話できるかどうかは、利用者のメンタルの強度に懸かっていると言えるだろう。

 支店は閉鎖され、周辺の人通りもまばらだが、実は今でもNTTの営業部隊がビルに残る。一見空き家のように見えるので、じきに電話も撤去されてしまうのではと心配したが、「現状では、その予定はない」(同社千葉事業部広報)というから一安心(?)だ。

(平口亜土)


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