台風15号巡る千葉県対応 内部検証でも課題続出 想定不足、連絡に遅れ 【県政インサイド】

台風15号直撃から4日後に千葉県が開いた3回目の災害対策本部会議。大規模停電の長期化や住宅被害の深刻さを受けて体制を強化した=9月13日
台風15号直撃から4日後に千葉県が開いた3回目の災害対策本部会議。大規模停電の長期化や住宅被害の深刻さを受けて体制を強化した=9月13日

 9月に千葉県を直撃した台風15号を巡って、県の対応を検証する外部識者会議が22日に初開催され、県の備えや初動時の「危機感の薄さ」に厳しい指摘が相次いだ。県の防災危機管理部長は、地震に対して用意している被害想定が、台風には事実上なかったと釈明。外部検証開始に当たり、県が内部でまとめた検証でも、暴風・大規模停電被害への認識の甘さや被災現場市町村との連携不足、知事・職員らの対応といった課題が次々と浮き彫りになっている。

 県の庁内検証チームがまとめ、22日に外部識者に示した報告書は、県による(1)災害対策本部設置前の体制(2)対策本部の設置時期(3)対策本部設置後の対応や体制-に、いずれも「不十分・不適切な点があり、初期対応が十分行えなかった可能性がある」と振り返る。

 台風15号の猛威を、県内10カ所で観測史上1位の最大瞬間風速を更新する記録的な暴風によって「長期かつ広範囲に及ぶ大規模な停電・断水や多数の家屋被害が発生するという本県が経験したことのない災害を引き起こし、既存の計画やマニュアルの想定を超える判断や対応を求められた」と改めて強調した上で、だからこそ「知事は、災害に適切に対応できる体制が取られていることを確認し、より迅速に判断できる態勢を取るべきだった」と指摘。担当の防災危機管理部による「知事への進言の遅れ」も影響したとする。

 森田健作知事や各部長ら県幹部同士で、携帯電話番号を非常時にも備えて共有している一方で、今回の台風直撃直後も、防災危機管理部長が知事に直接電話せず、秘書課を通じたやりとりや副知事への相談にとどまった点が、外部識者から改めて問題視された。

 県の内部検証では、被災市町村に対する積極的な支援に必要な情報収集体制も「十分とはいえず、手段や時期も適切とは言いがたい」と認め、市町村への情報連絡員の派遣が、台風3日後からだった事態を反省。

 10月の台風19号接近時には、事前に県の本庁や出先機関の職員を全市町村に派遣するなど、既に改善を図った部分もあるが、外部検証と並行し、可能な限りの体制強化や準備・想定を進めるのが急務だ。

◇台風15号対応を巡る県の主な自己反省点 ※外部検証会議に示した資料より

県災害対策本部設置前の体制

◆「この台風の雲域は比較的小さい」(銚子地方気象台9月8日午前11時報)との発表の印象から、災害発生の恐れへの危機感が薄かった。(本県に向かう)台風の進路や暴風域を伴っていたこと、鉄道の計画運休(9月8日午後4時発表)などを踏まえ、「情報収集体制」(9月8日午後0時58分~9月10日午前9時)よりも1段階上の配備である「災害警戒体制」にすべきだった。台風が暴風域に入ることが見込まれた際、知事に少なくとも「災害警戒体制」を取るよう進言すべきだった。

台風翌日の9月10日になった災害対策本部設置

◆ゴルフ練習場の鉄柱、送電鉄塔、電柱の倒壊などの報道映像があったが、9月9日夕時点での市町村からの報告では、家屋等の被害が200棟程度で、ほとんどが一部損壊だったため、大規模災害が発生しているとの認識を職員相互で共有できなかった。

◆(9日早朝から生じていた)大規模停電と断水を踏まえ、対策本部の(早期)設置を知事に進言すべきだったが、本県の過去の台風被害では、河川氾濫などの水害が中心で、大規模停電とそれに伴う断水経験がなく、判断できなかった。

対策本部設置後の対応・体制

◆本部事務局には、必要な人員体制を定めた「編成表」に従い、他部局の応援職員が加わることになるが、招集せず。当面、防災危機管理部の中で対応できると考え、災害対応業務の状況に応じて体制を逐次強化しようと考えた。その理由は、暴風被害の把握が進まない中、当面の応急対策の焦点が電力復旧であり、電力会社から「今週半ばにはかなり復旧できそう」との情報を得ていたことが心理的に影響したと考えられる。9月13日ごろまでは、防災危機管理部内での人員調整で対応できると考えていたが、停電の復旧見込みが数回にわたって修正され(遅れ)、対応の長期化が不可避となった状況を踏まえ、9月14日に他部局の要員に対する翌日の参集を指示した。

台風当日の9月9日に知事が登庁せず、公舎待機

◆知事は当日予定されていた行事をキャンセルし、公舎で報告を受け、それを踏まえた指示を出した。公舎は知事が生活する場所である一方、24時間公務を行える体制が取られ、県庁舎と一体的に機能するものだから、知事が公舎で公務を行うのは不適切とはいえない。しかし、県内全域で57万軒(9月10日午後0時半発表時点、同日午前8時発表時点では64万軒)という、本県でかつてない大規模停電が発生していたこと、記録的な暴風(9月9日千葉市中央区で最大瞬間風速57.5メートル、各地で40メートル超)による被害状況が十分に明らかになっていない段階だったことを踏まえれば、知事は県庁舎で、より迅速に情報収集や指示を出す態勢とすることが望ましかった。

被災市町村への支援

◆県が備蓄している物資の種類や数量は、県ホームページに掲載していたが、市町村への周知が十分ではなく、物資の規格などの情報共有も十分とはいえない状況だったため、備蓄物資(発電機)が有効活用されない事例が生じた。暴風による家屋被害が広範囲・多数発生し、市町村から、県が備蓄していた数量を大きく超える要請があった防水シート(ブルーシート)が大量に不足した。運送事業者との事前協定により、県備蓄物資の搬送に協力が得られることになっているが、トラックの空きがなく、支援を要請した市町村に、当日中に搬送できない可能性や、取りに来られるなら速やかに供出できる旨を伝えたところ、市町村職員が遠くの県備蓄倉庫まで取りに行く事態が生じた。

社会福祉施設などの被害状況把握と支援

◆県の地域防災計画やマニュアルでは、長期間の停電・それに伴う通信途絶時などにおける被害情報の収集、支援・救護を行う手順が明確になっていない。停電長期化に伴い、施設の通信障害が長引く事態が発生したため、県職員の現地派遣などを実施したものの、全施設への安否確認や要望聴取に数日を要した。

停電に伴う電源車派遣要請への対応

◆市町村、関係各課からの電源車の支援要請については、手順・スキームが確立しておらず、初動時に混乱があった。電源車の要請方法として、県内関係課が県災害対策本部に依頼する方法と、市町村が、東京電力の市町村現地派遣員を通じて東電本社に要請する2系統があった。県災害対策本部で把握できない分があり、県全体として効率的な配備要請ができなかった。


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