竹馬の友は幼名で

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 秋来ぬと目にはさや

 かに見えねども風の

 音にぞ驚かれぬる

       藤原敏之

 歌道も書道も平安時代を代表する人だが、そのちょっとだらしのない性格と、その名前「敏」のちっとありふれた発音が私似かも。

 両親の墓前で珍しく手を合わせ、胸に支えていた詫び言を済ませ、立ち上がると、涼しい風がフッと頬をなでる。

 もう秋なのか? 見上げる木の葉の端が茶色に縮(ちぢ)かんでいて、急に物寂しさが……。

 村里へ戻ると、神崎さんの義男ちゃんが、庭から道路にかけて打ち水をしていた。

 かつてはハニカミ屋だったが、いまでは「理論家」だということ。

 ホースを捌く手元を眺めていると、さりげなくビールなど届いた。私はいまビールは止められているが、こういうふんいきでは飲んでいいことになっている、と思う。

 義男ちゃんは、十月の秋祭りで太鼓をたたくことになっている。町会の「太鼓連」で太鼓もたたくし笛も吹くという。私も参加すると約束した。私はこうした約束はすぐにする。軽くて困る。

 神崎邸の前庭に面した公道、と言っていばれるほどの道でもないが、小型貨物車が徐行して、相野正成ちゃんが顔を出したが、義男ちゃんと話し中だったので、遠慮がちにゆっくり走り去った。

 正成ちゃんも数少ない郷里の友人であり、私の亡兄の生前に詳しく、よく思い出話をしてくれた。会う機会は少ない方だったが、性格のよさは記憶している。

 三人目の客は、先だって私の会を開いてくれた金坂さんの勲ちゃんだった。今日は人形作家の奥様がいっしょでなく、おばあちゃんが拾ってきた犬の散歩を押し付けられたと言っていたが、まんざら不満顔でもなかった。...