図案化フラメンコ

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 「マルチタレント」を持ち出すのは、あるいは失礼な用例かもしれないが、小堀龍司氏は「マルチアーチスト」である。

 「二十代から描き続けているイラスト。三十三歳から始めたきり絵。五十歳時に陶芸家グループの誘いで始めた陶芸。今回は、きり絵による陶芸と水彩イラストを展示します」=龍司

 今回の「きり絵による陶芸とイラスト展」も、そのマルチセンスを集約的に演出するメルヘンだった。

 小堀氏の原点はきり絵だと思う。種々の観音像の微細な切り込みは光背に及び、女性像は少女のはにかみから妖精の肌合いまで、輝くほどキメこまかく描出される。

 公民館やカルチャーセンターに数多の「きり絵教室」を持ち、市原市では、生徒といっしょに「郷土民話カレンダー」を制作し、五百円で販売している。民話の作者は私だが、影が薄い。

 陶芸作品にも精密なきり絵が鮮やかに焼き付けられ、即ち「小堀陶芸」の付加価値を高めているが、今回の展覧会では、私は水彩イラスト「ダンシング」を主に鑑賞した。

 「目(ま)の当たりに見たフラメンコダンスのイメージをモチーフにしていますが、だとしても限定されたフラメンコのイメージというわけでもなく、下書きもせず、一本の線の流れるままに形を追っていきました」

 作者が説明するように、一本の線が自在に伸びていき、躍動をとらえ、ときには図案化されて静止する。

 彩色も独自のセンスで魅力的だ。サイケデリックでもあり、幾何学的な色付けでもあるが、新聞紙面はモノクロで残念。...