円楽と花緑の落語会

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 有料道路を利して東金へ出る予定が、私を同乗させてくれた女性ドライバーさんが、ちょっと勘違いし、一つ手前の出口から出てしまった。

 ネオンの少ない、うす暗い田舎道に出ると、負け惜しみというか、自慰というか、外方(そっぽ)を向いて独り言(ご)ちた。

 「まあ、次で出れば5百円だけど、ここで出れば百円の得(とく)だ」

 4百円の出口から出た彼女は、ここをこう行けばあそこに出るなど、勝手にしゃべりながら、それでも開演時間(午後6時半)の20分前に、会場の東金文化会館に到着した。

 友人のトムちゃんこと戸村寿彦氏(東金市役所)の好意だろうか、ホール入り口前に「酒井登志生」駐車場が設けられてあった。

 ホールの入場口前では、私のグループが、家族のような笑顔で迎えてくれて、その時点で、トムちゃんの手から、3千円のチケットが、各々に手渡される。毎年のことだが、トムちゃんの自腹の好意だった。

 入場口を通り、案内されて指定席に着くと、待つ間もなく、開演を知らせるベルが鳴り響いた。

 柳家花緑の出し物は『笠碁』で、大店のご隠居2人の、いわゆる「碁敵」(ごがたき)を主題とする。

 内容は「待った」「待たない」から、論争が、昔、2人に関係のある女性問題にまでさかのぼり、絶交となるが、憎さも憎し、かわいくもありで、一方のご隠居が笠をかぶり、顔を隠すようにし、雨の中、ライバルの店の前を行ったり来たりして、碁敵の様子を探っている。

 すると、待ち焦がれていた側も、妙な笠かぶりの正体を見抜き、あわてて碁磐を店先に持ち出し、パチンパチンと石音で誘い、ついに元のさやに収まる。.......