吉成夫人の10月

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 例年、『ベイサイドジャズ前夜祭コンサート』の日、私はツインビルの和食料理店に招待される。

 招待主は作家の吉成庸子さんで、宴席はなじみの料理店ということで、もてなしも料理も最高だった。

 松茸の土瓶蒸し、和牛のステーキ、吟味したてんぷら五菜の盛り合わせ、食べ方も知らない私は、食べやすくしてもらいながらも、やはり箸はあまり使わないまま、ビールだけ飲みつづけていた。

 吉成庸子さんのサポート役は、京葉銀行OBのお二方で、私も近来親しくしてもらっている。

 座は例年に変わらず和やかだったが、話題に変化があった。有名な吉成庸子さんの「儀ちゃんエッセー」の話も出ず、三越劇場4月公演で、吉成庸子作『絹の手ざわり』大成功の話も出ず、私のエッセーを読んでくれていることから、皆さんが千葉日報と有縁である懐旧談などがつづき、その間の吉成庸子さんの物静かな微笑も気がかりだった。

 小宴が済むと、道路を挟んだ向かい側の千葉市文化センターへ移る。大原康人さんの『スーパージャズナイト』開演(午後6時半)5分前だった。

 大原康人カルテット(大原康人p・金子健b・平山惠勇ds・佐藤達哉ts)の演奏は最高だった。各プレーヤーが自分の音を最高に出しながら、チームワークとしても美事(みごと)にハモ(調和)っていた。

 阿川泰子さんが、ナイーブなボディーアクションで登場する。スネークダンスのようにも見えたが、さすが文学座演劇研究所出身のキャリアで、ちゃんと表現美を自己演出していた。

 会場の拍手の中で、ふと隣席を見ると、吉成庸子さんが目元にハンカチを当てていた。なぜ?事情は日を追って分明となる。......