2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

【千葉魂】井上、悔しさ晴らす号泣の一打 ファンの支え 幸せを実感

13日の楽天戦でサヨナラ打を放ち、涙を流す井上(中央)=ZOZOマリン
13日の楽天戦でサヨナラ打を放ち、涙を流す井上(中央)=ZOZOマリン

 大男が泣いた。ポロポロ泣いた。本拠地で行われた10月13日のイーグルス戦。試合を決めたのは巨漢・井上晴哉内野手の一振りだった。同点で迎えた九回1死一塁。魂の打球は右中間を抜けていった。二塁に到達する。ホームを見ると一塁走者の福田秀平外野手が全力疾走でホームイン。サヨナラ勝利だ。仲間たちが勢いよく駆け寄ってきた。二塁ベース上で何度もガッツポーズをした。ふとスタンドを見渡した。喜んでいるファンの顔が見えた。ライトスタンドを見る。内野席を見る。みんなが喜んでいた。涙腺が緩んだ。駆け寄る仲間たちの笑顔を見て、もう我慢ができなかった。大観衆の大歓声に包まれながら泣いた。

 「みんな喜んでいるのを見て自分もうれしくなった。安堵(あんど)感。二塁って球場のど真ん中じゃないですか。周りを見渡すとみんな喜んでいた。そしてベンチからは仲間たちが駆け付けてくれた。1番最初が益田で2番が安田、そしてマーティン。そしてホームまで駆け抜けてくれた(福田)秀平さんを探した。走ってくれてありがとうございますと言いたかった」

 井上がお礼を言おうと探していた福田秀は「打ったオマエがすごいよ!」と満面の笑みで称賛をしてくれた。素晴らしいファンと頼もしい仲間たち。今まで一人で抱えていた重圧や鬱憤(うっぷん)がイッキに晴れた気がした。人生を振り返っても人前であんなに泣くのは初めてだった。

 「首位攻防戦で打てなくて悔しくて考え込んでいた。モヤモヤした状態だった」という井上。一度、ロッカーに引き上げて気持ちを落ち着かせたがお立ち台でインタビュアーに「どんな気持ちで打ちましたか?」と聞かれると、これまでの悔しい想いが再び頭を巡り、目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

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 敵地で行われた先のホークス3連戦(ペイペイドーム)では1勝2敗と負け越し。ゲーム差を広げられた。チャンスで打てずに負けたと責任を背負い込んだ。大好きな夕食も喉を通らない。無理をして口に入れ込んだような食事だった。眠ることもできない。寝ようと思うとチャンスで凡退した場面が脳裏をよぎる。また悔しさを思い出すという悪循環だった。

 「寝れない。こんな時だから外出もできないし、テレビを見て切り替えようと思うけど簡単ではない。寝ようと思うと思い出す。ホテルで一人、勝手に背負い込んでしまっていた」

 そんな重圧の中で打ったサヨナラヒット。打った瞬間に分かったことがある。それは一人ではないこと。いつも一緒に戦ってくれる仲間がいる。そして心から応援をしてくれるファンがいる。

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 「優勝争いの経験がこれまでなかった。そんな中、こんな緊迫した状況で試合を決められたのは自信になる。しっかりと前を向いて緊張しながらも楽しみながら残り試合をやっていきたい」

 涙が枯れ果てた時、井上はいつもの満面の笑みを浮かべ決意を語った。目指す頂は1974年以来、46年ぶりのリーグ1位での優勝という偉業だ。プレッシャーはもちろんあるだろう。足は震え重圧に押しつぶされそうになるだろう。そんなときは一人ではないことをもう一度、思い出してほしい。井上はいつも二塁に進塁した時、アウトカウント、相手の守備位置などを確認してスタンドを見渡すのがルーティンだ。「最初は無観客だった。そして今はこんなに応援してくれる人がいる。応援してもらえる幸せを改めて実感している」。そう。この温かい拍手を送ってくれる日本一のファンがいつも支えてくれる幸せを感じながら戦えばいい。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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