2025年9月4日 05:00 | 有料記事

写真はイメージ
「トイレキレイに」。父は息子から、注意されたことをメモするように言われ、書いていった。注意書きは増え、15枚前後に。昨年1月の能登半島地震で被災した父を、君津市に住んでいた息子は引き取っていた。父は認知症が進んだせいか、トイレがうまくできなくなり、毎日、トイレの床をぬらした。息子はこらえきれず父を蹴り、死なせた。なぜこのような結末を迎えたのか。公判取材から事件の経緯をたどる。
(大村慧)
千葉地裁での裁判員裁判で、息子の大久保実被告(45)は父の誠一さん=当時(78)=に対する傷害致死の罪に問われている。起訴状によると、昨年12月5日午後7時半過ぎ、自宅で父の腹を1回蹴り、肋骨(ろっこつ)の多発骨折などにより死亡させたとされる。
被告は石川県輪島市で生まれ育った。家族は両親と2人の姉。大学に進学してからは1人暮らしが続き、石川の実家に帰るのは盆と正月程度だった。2人の姉とは関係がうまくいっていなかった。7年ほど前、母がくも膜下出血で倒れた時、介護費用を巡り「大学を ・・・
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