広島、長崎への原爆投下から65年目の夏を迎えた。戦争を知らない世代が多くなり、豊かさと快適な生活に慣れてしまったわたしたち。戦争の悲惨さ、恐ろしさと、平和の尊さを次世代に語り継ぐ必要性がより高まってきている。
この夏、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、冷戦下で米国が核実験を繰り返したマーシャル諸島のビキニ環礁の世界遺産への登録を決めた。日本のマグロ漁船「第五福竜丸」も被ばくした水爆実験。「環礁の経験を繰り返すことはできない。将来の世代の記憶にとどめなければならない」とされた。
同じ核兵器による惨禍を伝える世界遺産に広島の原爆ドームがある。広島原爆忌では、原爆投下を正当化してきたアメリカや、イギリス、フランスなどの核兵器保有国から初めて出席があった。この節目を核廃絶への本格的な取り組みを進める一歩とすべきだ。
これらの新しい動きとともに、戦争の悲惨さを地域で語り継ぐ地道な取り組みこそ大切にしたい。毎年、市役所や公民館、図書館などを会場に、原爆や空襲に関する写真パネルなどが並び、ビデオ上映や講演会もある。若い世代にとって、そこに忘れてはならない現実があることを知るきっかけになるはずだ。
県庁で開催された「平和のための原爆パネル展」(4~6日)は、県内の被爆者団体が主催し、今年で8回目。歳月を経たとはいえ、全身が黒こげになった遺体やただれた皮膚の写真、水を求めてさまよう被爆者の絵は生々しく胸を打つ。千葉市内では「千葉空襲パネル展」が巡回中だ。
もし親族や地域のお年寄りから体験談を聞ける機会があったのなら、ぜひ生かしてほしい。高齢化が進む中、身近な人からの体験の共有こそ代え難い。
そして、地球のどこかで今も戦争が続いていることや、沖縄では米軍基地が切実な問題として戦後を引きずっていることに想像力を働かせなければならないだろう。
過ちを繰り返す愚かな動物が人間と言われる。目をそらし、忘れることで救われることもある。しかし、忌まわしい戦争の記憶を心に刻むことで、「負の遺産」を平和の礎としなければならない。