「停電解消」も空白地帯 倒木や崩落…作業難航 鋸南・市井原を歩く 【台風15号】

停電が続く山あいの地域。豪雨による土砂崩れや崩落で倒れた電柱が目にとまった=24日午後3時25分ごろ、鋸南町市井原
停電が続く山あいの地域。豪雨による土砂崩れや崩落で倒れた電柱が目にとまった=24日午後3時25分ごろ、鋸南町市井原

 鋸南町の山間部にある市井原地区では、豪雨による土砂崩れで電柱が何本もなぎ倒されていた。東京電力によると、台風15号の停電はおおむね解消したというが、倒木や道路の崩落で作業が難しい地域での復旧は困難を極めている。町役場が発電機を持ち込み断水は解消されたものの、いまだに停電が続く世帯がある。台風上陸から半月が過ぎた同地区を取材した。(報道部・渡邊翔太、中野采香)

 館山自動車道の鋸南保田インターチェンジから、車を走らせること数分。スギなどが生い茂る山並みが広がる市井原地区に入った。

 同地区で生まれ育ち、現在も暮らし続ける男性(70)が停電の続く地域を案内してくれた。山あいに建つ数軒の住宅。多くが築数十年の別荘で現在は2軒に人が住んでいるという。山の入り口の道路は崩落し、軽乗用車がどうにか通れるほどだ。

 車での取材を断念し歩いて道を進むと、スギなどが大量に倒れ、至る所で電柱や電線を巻き込んでいた。住民によると、通行のために自衛隊が木を伐採していった。男性は「かつては木を切って管理していたが、今では伸びっぱなし。大きくなり過ぎていたから被害を拡大させたのでは」とつぶやく。

 歩き始めて30分。1軒の住宅にたどり着いた。高齢女性が1人で暮らしているといい、軒先には『避難しています』との貼り紙。ほかにも夫婦が住んでいるという家もあった。2軒ともいまだに電気は通っていない。

 同地区では、電気によるくみ上げ式の水道を使っている。町は24日夜、ポンプを動かす加圧所に発電機を設置して、水の供給を再開した。町の職員は電気が復旧するまで定期的に行き来し、自家発電を維持するという。

 ただ1人で避難所生活をしている女性もいた。川名せつさん(79)は10日から「鋸東コミュニティセンター」で過ごしている。自宅はほぼ全壊状態だといい、町からは複数の避難者がいる別地区の避難所を勧められたが、「慣れ親しんだ土地を離れたくなかった」。

 川名さんを心配して、道案内してくれた男性ら近くの住民は様子を見に避難所に足を運ぶ。川名さんは「皆さんが助けてくれて感謝している。復旧はとんでもない時間がかかると思うが、絶対にいつか(自宅に)帰りたい」と涙ぐんだ。


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