ブランド米ピンチ 稲倒れ品質、収量影響 ルポ・多古町を歩く 【台風15号】

強風で倒れた稲の状態を確認する菅沢さん=18日午前11時15分ごろ、多古町
強風で倒れた稲の状態を確認する菅沢さん=18日午前11時15分ごろ、多古町

 台風15号により大きな被害を受けている多古町。停電の影響で、千葉を代表するブランド米「多古米」の収穫が大規模農家を中心に遅れており、関係者は「品質や収量が落ちる可能性が高い」と肩を落とす。町内では18日も約1700戸(午後8時現在)で停電が続き、地域を歩くと「精神的に追い込まれている」と悲痛な声も聞こえてきた。(香取支局長・塚越渉)

 「早朝に電気が来た。乾燥機が使えるので収穫を再開できる」。18日、停電が9日ぶりに復旧した同町高津原の菅沢昌則さん(63)は、少しだけ安堵(あんど)の表情を浮かべた。ただ、約20ヘクタールの田んぼでは、強風で倒れた稲も目立ち、品質や収量の低下は必至だ。

 稲が倒れ、稲穂が水に長時間漬かると、もみが発芽。収穫しても商品にはなりにくい。菅沢さんは早期の収穫完了を目指して作業に取りかかったが、この日は非情にも雨が降り注いだ。作業は中止に追い込まれ「夏場の天候不良もあった。このままだと例年より収量がかなり落ちるかも」と不安げな様子だった。

 同町喜多の米農家、山口清さん(65)も18日、停電は復旧したが県や東京電力の対応を問題視。「臨機応変な災害対応ができていない。電気もいつ復旧するのか、何が原因なのか分からず、不安なまま待つことしかできなかった」と語気を強めた。

◆生乳は集荷先停電で廃棄

 一方、同町北中の谷津地区は集落全体で停電が続く。

 乳牛55頭を飼育する「平山牧場」の平山信知さん(70)は、自家発電機で送風機を動かしているが、少ない電力では牛舎の照明分までまかなえず、夜間の搾乳は懐中電灯を片手に行う。集荷先が停電で、出荷できずに廃棄した生乳も3トンに上った。発電機の音がうるさく、睡眠に影響も出ている。

 「一刻も早く復旧を。精神的に追い込まれている」。そう話すのは、谷津地区自治会長の平山幸男さん(57)。町内では災害に便乗した空き巣被害も発生しているという。東電によると、多古町の停電は20日までにおおむね解消される見通しだが、住民の精神的疲弊は限界を迎えている。


  • LINEで送る